ワイン王の暮らしはリッチだった…アメリカで成功した薩摩藩英国留学生「長沢鼎」の高級ナイフ・フォークセットを鹿児島で公開

長沢鼎(右)の米国の自宅で撮影された会食風景。テーブルの上にはナイフやフォークが見える(薩摩藩英国留学生記念館提供)

 薩摩藩英国留学生の一人で、米国カリフォルニアでワイナリー経営に成功した長沢鼎(かなえ、1852~1934年)の遺品のカトラリーセットが確認された。ナイフとフォークが収納された計2ケースで、専門家は「米国での豊かな生活をしのばせる」と話している。薩摩藩英国留学生記念館(鹿児島県いちき串木野市)で、4月1日から一般公開される。

 長沢のおいの娘で、幼少期に一緒に暮らしたエイミー・イジチ・モリさん(2021年に94歳で死去)が「長沢の持ち物」として残した遺品から見つかった。エイミーさんの親族から「鹿児島の人たちに見てほしい」と、記念館と、長沢を研究する鹿児島国際大学の森孝晴教授(69)に1ケースずつ寄贈された。

 12人分と18人分のナイフ、フォークのセット。それぞれ木製のケース入りで、細かな装飾が施されたり、持ち手に象牙が使われたりしている。長沢が入手した時期は不明だが、社名の刻印などから19世紀後半から20世紀初めにかけ、欧州から輸入された高級品とみられる。森教授は「パーティーで客をもてなす際に使ったはず。長沢の栄華が想像できる」と話す。

 長沢の死後も米国で暮らした親族たちは、人種差別を受け、戦時中には日系人収容所に入れられるなど苦境に立たされたという。記念館の奥ノ園陽介副館長(45)は「長沢を誇りに思い、遺品を守り続けてきたのだろう」と語った。

 カトラリーは鹿国大でも森教授にメールで事前連絡すれば見られる。森教授のアドレスmoritaka@int.iuk.ac.jp

長沢鼎遺品のカトラリーセット。ナイフやフォークの持ち手には装飾が施されている=鹿児島市の鹿児島国際大学

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