住宅ローンを一気に完済!憧れのタワマン生活を満喫する「月収43万円・55歳の幸せ家族」突如、生活破綻したら…失業保険で食いつなぐのも限界

日銀のゼロ金利政策解除により、「金利はどうなるのか……」と住宅ローンを抱える人たちの不安は増すばかり。そんななか「一気に住宅ローンを返済」で、ローン負担から解放されたタワマン住民も。「貯蓄はゼロ円になった」という、その先にあるリスクとは? みていきましょう。

貯蓄はゼロになったが…予定よりも15年早く住宅ローンを完済

――住宅ローンを一気に完済!

――おかげで貯蓄はゼロ!

――これから資産形成、頑張ります!

熱い意気込みを綴る、55歳のサラリーマン。5,000万円の住宅ローンを利用して、東京郊外のタワマンを購入したのが15年ほど前の話だといいます。

【30代サラリーマン世帯のローン返済計画】

借入:5,000万円

金利:0.5%

返済方式:元利均等

返済期間:30年

返済開始時期:2008年3月(39歳時)

返済終了時期:2038年3月(69歳時)

月返済額:149,594円

当初の予定通り返済していったら、完済は70歳手前。せめて、年金をもらうようになる前に住宅ローンの呪縛からは解放されたい……と、2年に1度、200万円の繰上げ返済を行ってきたといいます。コンスタントに繰り上げ返済ができれば、完済時期は2027年6月、58歳になったとき。

――なんと、定年前に住宅ローンを完済できる!

そう考えて、コツコツと返済をしてきた2024年、ローンの残債が遂に1,000万円を下回ったのを機に「一気に返してしまおう!」と一念発起。当初の予定よりは15年近くも、繰上げ返済を続けていった場合よりも3年早く住宅ローンの完済を実現しました。

――なんて清々しい

――ゼロ円となっている銀行口座を見るのはちょっと怖いけど

月20万円程度では生活を維持できない…タワマンならではの事情

ローン負担から解放されたとはいえ、貯蓄はゼロと家計は脆弱。このようなローン返済はお勧めできるものではありません。

――貯蓄がゼロで……会社が急に倒産なんかしたら、どうするの?

当の本人たちからしたら「ローン返済分をすべて貯蓄に回せるわけだから、すぐにお金はたまるはず」と考え、リスクが生じるのは一瞬だけ、と考えるでしょうか。万が一、貯蓄ゼロの状態で恐れていた勤務先の破綻などが起き、収入がゼロになったとしたら……まず頼れるのは失業保険。基本手当日額は、賃金日額のおよそ50~80%(60~64歳は45~80%)で、離職した日の直前の6カ月間に毎月決まって支払われた賃金の合計額を180で割った金額です。また上限も決められています。

仮に55歳のサラリーマンの平均給与で考えると、月収は平均43.1万円。失業手当は上限いっぱいの1日7,166円となり、30日で21万円ほどが手にできる計算になります。45歳以上60歳未満の場合、被保険者であった期間が20年以上であれば給付日数は330日です。この間に再就職先を見つけて、生活を立て直すことになります。

――でも月20万円程度で食つなぐのは、このタワマンでは無理

と男性。タワマンを購入して15年余り。階数でクラス感は異なるものの、中下層階に住む家族は年収や学歴、家族構成、生活スタイルまで似たようなもの。入居当初からご近所付き合いは頻繁で、このコミュニティがある限り、勤務先が倒産したからといって生活の質を下げることはできず、見栄を張り続けるしかないといいます。

不動産価格上昇で「せっかく手に入れたタワマン」売却も視野に

失業手当ではタワマン暮らしは限界……ではいざ、万が一のことが起きたらどうするのかというと、「いまなら売るのもあり」と男性。

国土交通省が3月26日に発表した2024年の公示地価によると、全用途は3年連続の値上がりで、全国平均は前年比2.3%の上昇。伸び率はバブル期以来33年ぶりの高さでした。

市町村別に公示地価みていくと、最も地価が高かったのが「東京都中央区」で1坪あたり2769万9,999円。「東京都千代田区」「東京都渋谷区」「東京都港区」「東京都渋谷区」と続き、東京都意外では13位に「大阪府大阪市」がランクイン。また変動率でみていくと、トップは「熊本県大津町」で前年比17.83%上昇。これは台湾の半導体製造大手のTSMCの工場ができたことによる影響。同じく3位の「北海道千歳市」も同様、半導体工場の建設が決まったことによる地価上昇です。

男性が住む神奈川県川崎市は平均坪単価142万9,192万円で、変動率はプラス4.18%。価格は1,374市区町村中33番目で、変動率は127位でした。男性の住むエリアでは8%程度の上昇で川崎市の平均以上。また男性の住むタワマンの中古価格も値上がりしているようで、「この前、ポータルサイトで売ったらいくらくらいになるか調べたら、想像以上の金額で……売るのもありだと思った」と、目を輝かせていいます。

昨今の不動産価格の上昇により、せっかくローン完済を果たしたマイホームでも「売却」という選択肢がチラついていると男性。また年齢的にも「老後の住まい」について考えるようになり、「このタワマンで最期を迎えるイメージがわかない」と思い始めているといいます。どちらにせよ、いまは貯蓄ゼロの状況から脱するのが最優先。老後を見据えた資産形成も急ピッチで進める覚悟だといいます。

[参考資料]

国土交通省『全国の地価動向は全用途平均で3年連続上昇』

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