播州織業者「橋本裕司織布」(兵庫県多可町)が、オリジナル生地「流風織」を使ったジャケットとズボンの海外展開に乗り出した。流風織は軽く、伸縮性に優れているのが特長で、完成したジャケットは一般的な商品の半分の重さ。しわになりにくく、丸めて収納することもできる。代表の橋本裕司さん(48)は「ジャケットをかばんに忍ばせ、必要な時にさっと羽織れる」と強みを語る。(伊田雄馬)
同社は1964(昭和39)年創業で、生地の受注や自社企画のストールを製造している。3代目の橋本さんはこれまでなかった生地を追求し、生まれた流風織で縫製業者やIT業者らとチームを組み、約5年をかけて商品化したという。
流風織は約40年前の希少なレピア織機で、時間をかけて織られる。その名の通り、生地の表面にある独特な凹凸が空気を含んで肌触りを高め、蒸れずに長時間着用することができる。
伸縮性に優れた生地で、体を包むような感覚を得られることから、橋本さんは製品を「KURUMU(クルム)」と名付けた。ジャケットにはカラー(えり)がなく、男女問わず着られるカジュアルなデザインに仕立てた。
昨年3月、橋本さんはクルムを応援購入サイト「マクアケ」に出品し、目標金額の13倍となる約260万円分を売り上げた。海外のユーザーの反応も探ろうと2月27日からは米国の大手クラウドファンディングサイト「キックスターター」にも出品。期間は4月12日までで、これまで250万円分以上が購入されている。
橋本さんは目下、シンガポール市場への進出を目指している。兵庫県商工会連合会のつてで、現地の関係者にサンプルを送付して反応を探っているという。「見たことがないものを作りたい、という気持ちで生んだ商品。現地の人々の課題解決につながればうれしい」と夢を描く。
価格は国内外共通で、ジャケットが3万6300円、ズボン2万900円、上下そろいで5万5千円(いずれも税込)。サイズは男女共通のM、Lで、色は黒とネイビーの2色。オンラインショップなどで購入できる。橋本裕司織布TEL0795.32.1512