打者専念の大谷は40本塁打&40盗塁の大記録を達成し、ドジャースは強打の遊撃手を途中補強。そして世界一は…2024年MLB「5つの大予言」<SLUGGER>

いよいよ現地3月28日に全30球団が開幕を迎えた2024年のMLB。果たして今季は一体どんな出来事が起こるのか。頂点に立つのは一体どのチームなのか。SLUGGER編集部が考えた「5つの大予言」を紹介しよう!

▼大谷翔平(ドジャース)は40-40を達成する!

今季最も注目されている選手と言えば、10年7億ドルの超大型契約でドジャース入りした大谷をおいて他にいない。右肘手術の影響で今季は打者に専念するが、だからこそ期待したい偉業がある。40-40(40本塁打&40盗塁)の達成だ。

パワーとスピードを高いレベルで兼ね備えている選手しか達成できない40-40は、22年までわずか4人しか達成していない大偉業だった。昨季、ロナルド・アクーニャJr.(ブレーブス)が史上初の40-70を達成したとはいえ、依然として入会資格の大変厳しい「クラブ」であることは間違いない。

大谷はMLB屈指のパワーヒッターであると同時に、スピードも一流だ。21年はキャリアハイの26盗塁、昨季も20盗塁を決め、40-20はすでに2度達成している。昨季からのベースサイズ拡大や牽制の制限も追い風になるだろうし、何より投球への影響を心配することなく自由に走ることができるのは大きいだろう。韓国での開幕戦で、さっそく今季初盗塁を決めた大谷。今季はフィールド狭しと駆け回る姿が例年以上に目立つシーズンとなりそうだ。
▼ドジャースは途中補強でウィリー・アダメス(ブルワーズ)を獲得する!

大谷、山本由伸を獲得するなど大補強を展開した今季のドジャースは、まさに世界一が至上命題。だが、要のポジションであるショートに不安を抱えたままシーズンに入った。当初はギャビン・ラックスがレギュラーに予定されていたが、送球難で急きょムーキー・ベッツのコンバートが決定。いくらベッツがスーパーアスリートだからといって、これまでほとんどショートの経験がない31歳の選手がフルシーズン守り抜くことができるとは、にわかには考えにくい。

ここで浮上するのが、途中補強で遊撃手を獲得する、というシナリオだ。中でも、有力候補はウィリー・アダメス(ブルワーズ)だろう。昨季はやや不振だったが、22年には31本塁打を放って球団遊撃手記録を更新するなど実績十分。強肩を生かした守備にも定評がある。しかもブルワーズは戦力低下が懸念されているだけに、今季終了後にFAとなるアダメスの途中放出に踏み切る可能性は十分ある。

ドジャースはこれまでもダルビッシュ有(17年)、マニー・マチャド(18年)、マックス・シャーザーにトレイ・ターナー(21年)とシーズン中に大物選手を獲得してきた“実績”がある。今季も必ずや途中補強に動くはず。そう考えた場合、現段階でのトップターゲットはやはりアダメスではないだろうか。▼ア・リーグMVPはアドリー・ラッチマン(オリオールズ)が受賞する!

大谷翔平がドジャースへ移籍した今季、アメリカン・リーグのMVPを受賞するのは一体誰だろうか? 現地アメリカでは、フアン・ソトかアーロン・ジャッジ(ともにヤンキース)が最有力候補と考えられているようだ。『FOX Sports』のオッズでもこの2人がトップに立っているが、ここではあえてアドリー・ラッチマン(オリオールズ)を推したい。

2022年にメジャーデビューを果たしたラッチマンは1年目から攻守にチームを牽引。昨季ア・リーグ最多の101勝を挙げ、今季はワールドシリーズ優勝候補にも挙げられているオリオールズ大躍進の象徴的存在となっている。開幕戦で3安打と打撃でも好スタートが切れたが、それ以上にリーダーとしての存在感がさらに増してきた。これまでJT・リアルミュート(フィリーズ)、ショーン・マーフィー(ブレーブス)といった球界屈指の名捕手と組んだ経験のある先発左腕のコール・アービンは、「ラッチマンにはリアルミュートやマーフィーと同等の存在感が出てきた」と述べている。

どれだけ勝利に貢献したかを示す総合指標WAR(FanGraphs版)は22年が5.4、23年が5.1と高水準だったが、同サイトの成績予測システム『Steamer』によると、今季は5.7まで上がると予想されている。これはア・リーグではソト(6.7)、ジャッジ(6.2)に次ぐ3位で、MVPは十分に射程圏内だ。もしオリオールズがヤンキースを倒して地区優勝することになれば、ラッチマンが受賞する可能性はぐっと高くなるだろう。
▼2025年からのストライク/ボール自動判定システム導入が決定!

現コミッショナーのロブ・マンフレッドは、これまでにも数々のルール改正を推し進めてきた人物だ。17年から導入された申告敬遠や、18年に採用された監督・コーチのマウンド訪問回数の制限、そして昨季からのピッチクロックは、マンフレッドが就任以来公約に掲げていた“時短”のための肝入りの施策だ。現在でも数々の新ルール導入を目指しているマンフレッドの次なるターゲットが、ストライク/ボールの自動判定システムだ。

『Automated Ball/Strike System』、略してABSとも呼ばれるこのシステムは、スタットキャストの計測でも活用されている高性能カメラ『ホークアイ』が捉えた投球の軌跡を基に自動的にストライク/ボールを判定して主審に伝達。主審は機械の判定を参考に、ストライク/ボールをコールする。

22年から3Aで試験的に導入されていて、今季からはKBO(韓国プロ野球)でも採用。また、オープン戦中に行われたトップ有望株たちのエキシビション・ゲーム『スプリング・ブレイクアウト』でも使われて注目を浴びた。本来は今季からMLBでも導入されるはずだったのが延期された経緯があるが、将来的な導入はすでに既定路線。『USA TODAY』紙の名物記者ボブ・ナイチンゲールも「25年には採用されるだろう」と予測しており、あとは正式発表を待つばかり?
▼マリナーズが球団史上初のワールドチャンピオンに!

2023年は、創設62年目にしてレンジャーズが初の頂点に立った。だが、データサイト『FanGraphs』の昨季開幕前の予想では、レンジャーズの世界一確率はわずか2.0%だった。ということは、今季もドジャースやブレーブス、アストロズといった「本命」ではなく、「意外なチーム」がワールドチャンピオンになる可能性は十分ある、と考えるべきだろう。

ここで注目したいのがマリナーズだ。今季の世界一確率はわずか4.2%。しかも、同地区にはアストロズやレンジャーズといった強豪もいる。それでも、22年は実に21年ぶりのプレーオフ進出を果たし、昨季もシーズン最終盤まで地区優勝を争うなど、レンジャーズと互角に渡り合える戦力を誇っている。
特にルイス・カスティーヨ、ローガン・ギルバート、ジョージ・カービーを中心とする先発投手陣は球界屈指の陣容を誇り、FanGraphsの予想でもプレーオフ進出確率は60%以上と出ている。ひとたび10月の舞台に立てば、あとは勢いが物を言うのは、昨年のレンジャーズやダイヤモンドバックスが証明した通り。パワーとスピードを兼ね備えた23歳のセンター、フリオ・ロドリゲスをはじめ、プレーオフで勢いをもたらし得る若い力にも事欠かない。

昨オフは思わぬ予算削減策がファンの反感を買ったものの、いざ世界一が近づいたという実感があれば、オーナーも補強にGOサインを出すはず。1977年の球団創設以来、まだワールドシリーズの舞台に立ったことすらないマリナーズだが、今季は大輪の花を咲かせるに違いない。

構成●SLUGGER編集部

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