【お花見】ソメイヨシノが一斉に開花する理由を知ってる? 実は全てクローンだった(研究結果)

3月29日、「東京都心で桜が開花した」と東京管区気象台が発表しました 。平年より5日遅く、2023年よりも15日遅い開花。靖国神社のソメイヨシノで観測されました。関東地方でお花見シーズンを心待ちにしていた方には、うれしい知らせです。
全国的に今週から来週にかけてお花見を楽しむ方も多いはず。この記事では、お花見の席で話題として使えそうな桜のトリビアを紹介しましょう。

ソメイヨシノのイメージ写真(Doctoregg / Getty Images)

ソメイヨシノは全てクローンだった

開花速報でも分かるように、日本で桜の品種といえばソメイヨシノが代表的。お花見といえば大体、ソメイヨシノですよね。
ソメイヨシノの樹木が並んでいると、淡いピンクの花が一斉に咲くのが非常に見応えがありますが、これにはある理由がありました。実はこの世に存在するソメイヨシノは、全て同じ遺伝子情報を持つクローンだからなのです。
京都大学にいた印南秀樹教授さんらが1995年に、沖縄を除く46都道府県の68個体のソメイヨシノのDNAを調査した結果、「全ての個体は同一クローンだった」とする調査結果を 発表しています
桜の研究者として知られる森林総合研究所の勝木俊雄さんは、著書『 桜の科学 』(サイエンス・アイ新書)で、栽培品種のソメイヨシノを“染井吉野”と表記しつつ、以下のように指摘しています。
<野生のヤマザクラのように、それぞれ遺伝的に異なる個体であれば、個体によって開花日の平均値や誤差のタイミングが異なります。吉野山のヤマザクラなどは、花の大きさや色合いなども含めて、多様性のあるサクラが鑑賞されている例です>
<ところが、“染井吉野”の場合、すべて同じ遺伝子をもつクローンなので、開花時期のタイミングが揃うのです。同じ条件の“染井吉野”が、同じタイミングで咲き始めて満開となり、散っていくことになります>

桜の名所として知られる東京都千代田区の千鳥ケ淵のソメイヨシノ(2023年撮影、時事通信)

ソメイヨシノをクローン以外で増やせない理由とは?

謎は解けましたが一体、なぜソメイヨシノは全てクローンなのでしょうか。それは、ソメイヨシノという品種が種から育つことができず、挿し木や接ぎ木でしか増やすことができないからです。
その理由は、クローン同士では受粉しても種ができないからです。国立遺伝学研究所の公式サイトで、以下のように 解説しています
<挿し木や接ぎ木でしか増やせないのは自家不和合性があるためです。 自家不和合性とは、S遺伝子型がオス(花粉)とメス(雌しべ)で全く同じ組み合わせの場合、受粉しても受精に至らず、種子が実らない現象です。 クローン同士だとS遺伝子も全く同じなので、ソメイヨシノの種子は得られない、すなわち実生でソメイヨシノを育てることはできません。>
ソメイヨシノは、他の品種の桜との間で受粉すれば種子を実らせることはできます。しかし、その種子を育てても交雑種であるため、ソメイヨシノという品種にはならないそうです。

-東京都港区の毛利庭園のソメイヨシノでお花見をする人々(2023年撮影、時事通信)

江戸時代末期に登場。クローン増殖で全国統一規格になったソメイヨシノ

勝木さんの別の著書『 』(岩波新書)によるとソメイヨシノという品種は、もともと日本列島に分布していた野生の桜ではなく、ごく近年に広まった栽培植物だそうです。近年のDNA調査の結果、ソメイヨシノは エドヒガン オオシマザクラ の間に生まれた交雑種だったことが判明しています。
確実な記録は残されていないものの、江戸時代末期に染井村(現在の東京都豊島区)の植木屋から「吉野桜」として売り出されたものと考えられているそうです。
東京帝室博物館(現在の東京国立博物館)の職員だった藤野寄命(ふじの・きめい)さんが、1900年(明治33年)に上野公園の桜を調査したときに、「吉野桜」として植えられている桜の中に、奈良県の吉野山に多いヤマザクラとは異なる個体を発見。「染井村で売り出されていたらしい」と古老から聞いて「染井吉野」と名付けたのが由来となっています。
ソメイヨシノは成長が早い上に、開花の時期には葉が成長していないことから薄ピンク色の花だけが目立つことから人気を呼び、明治時代になると爆発的に全国に広まったそうです。
広まった初期には種で増やすことも試みられたようですが、接ぎ木によるクローン増殖の方が「一斉に花を咲かせる」ということで主流になり、結果的に全国統一規格のソメイヨシノが生まれたと考えられているそうです。

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