不動産会社の経営者が教える! 年収400万円でローン「マンション購入の基本ルール」

年収400万円でいくらのマンションが購入できる?

――4月、新しい年度になり、物件の購入を検討しはじめた人もいると思います。

石岡 確かに新年度は、心機一転、新しい環境に身を置きたくなる人が増えます。実際に「家を購入したい」と探し始めるかたもいます。けれど購入するとなると賃貸物件とは違い、さまざまなハードルがあり、簡単に契約が結べるわけではありません。まず物件を探し始める前に、購入するにあたってかかる費用について知っておいてほしいです。

――なるほど。それではさっそく、物件を購入する前段階での心構えや注意点、NG行動などについて教えてください。

NG1 年収倍率を計算しない

物件の購入を考えるとき、まず大事なのが予算を立てることです。いまの世帯年収で、いくらくらいのマンションが購入できるのか? その目安になるのが、年収倍率という指標です。

年収倍率とは、借入額÷年収で算出することができます。 金利によっても異なりますが、無理なく住宅ローンを返済していくためには、現時点の低金利であれば年収倍率7倍以内に収めるのが望ましいと言われています。

たとえば年収400万円の人であれば、マンション購入価格は2,800万円以内に収める。そうすれば、リスクを最小限にすることができるということです。

年収倍率を参考に、大まかな予算を知るところから始めましょう。

NG2 奨学金やクレジット払いを滞納している

高価な買い物なのでほとんどの人が住宅ローンから借り入れると思いますが、その際の返済負担率を計算する場合、借り入れを希望している住宅ローンの金額だけでなく、奨学金や他のローンの残高も含めて計算する必要があります。

返済負担率とは、年収に対する年間返済額の割合のこと。多くの金融機関では、30~35%を上限としています。

たとえば、年収400万円の人が年間100万円の借金を返済するときの返済負担率は、100万円÷400万円×100=25%となります。

返済負担率を計算する際の年間返済額の合計は、住宅ローンの返済額だけでなく、奨学金や他のローンなどすべての借金の返済が含まれるのです。

なお、奨学金を3か月以上延滞している人は、住宅ローン審査に通らない可能性が高いです。この他、携帯料金やクレジットカードの支払いなども3か月以上、滞納すると同様に住宅ローン審査に通らない可能性大です。

いますぐでないにしろ「いつか家が買いたい」と思っている人も注意が必要です。ローンがある人はくれぐれも滞納しないように気をつけてください。

NG3 手付金が準備できない

住宅購入にかかる初期費用は、頭金、手付金、諸費用の3種類があります。

頭金とは、住宅ローンを組む際に支払う初期費用のこと。頭金なしで住宅ローンを組むこともできるため必ず必要な費用というわけではなく、あくまでも住宅ローンの利息負担の軽減の意味合いで支払われるものです。

手付金とは、売買契約締結時に支払われる初期費用であり、民法にも規定されています。現金一括払いであり、支払った金額は売買代金へ充当されます。

諸費用とは、契約を行うにあたっての事務費用のこと。不動産仲介業者に支払う仲介手数料や、住宅ローン手数料などに当たりますが、住宅ローンの借り入れに含めておけば、自己資金として用意する費用はありません。

この中で、売買契約締結時に必ず必要となり、基本的に現金一括で支払わなければならないのが手付金です。

売買契約について一定の拘束力を持たせる意味合いがあるため金額もそれなりに高額で、売買代金の5%~10%が相場となります。たとえば3,000万円の住宅を購入する場合、150万円から300万円もの自己資金を、現金で支払わなければならないのです。

手付金の準備ができない場合、気に入った物件を購入することができなくなることを覚えておきましょう。

NG4 住宅ローン契約前に転職する

住宅ローンを借り入れる金融期間にもよりますが、基本的には勤続年数が長いほど住宅ローンの金利は低くなり、審査も通りやすくなります。

6か月以上、同じ会社に勤続していないと申し込み不可という金融機関も多いため、転職する時期には注意が必要なのです。

たまに、「すべて心機一転、家の購入と転職を同時にやりたい」というかたもいますが、おすすめできません。

転職を検討している場合、住宅ローン契約後に行うのがおすすめです。

Information

<教えてくれた人>
石岡茜さん。2013年に「女性のための不動産会社を作りたい」と、東京・学芸大学に「ことり不動産」を設立。女性ならではの細やかな視点と「幸せな家選び」をモットーに、物件選びをサポートしている。宅地建物取引士。著書に『持ち家女子はじめます』(飛鳥新社)がある。現在、TV CMを放送中。YouTube「ことり不動産TV CM」でも視聴可能。

取材、文・髙倉ゆこ

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