バトルの舞台はなんと東京ビッグサイト!「フォーミュラE 2024 TOKYO E-PRIX」で、サスティナブルなカーエンターテインメントの未来を感じた【週刊スタッフブログ 号外】

2024年3月30日、東京都心で日本初の本格的な公道自動車レースが開催されました。会場は、東京モーターショーあらためジャパンモビリティショーでおなじみの東京ビッグサイト周辺。電気自動車のF1と言われる専用マシン「フォーミュラE」による2.545km×33ラップ+αの戦い「2024 TOKYO E-PRIX」を観戦しての素朴な印象を、レポートしたいと思います。

賑わいを見せる会場。家族連れの多さにびっくり

ジャパンモビリティショー(JMS)で勝手知ったる東京ビッグサイト。ですが、いつもの東ホールは「フォーミュラE ファンビレッジ」として無料開放。やや暗めの照明のもと、大きな空間をゆったりと使ったアトラクションがいくつも用意されていて、それぞれに家族連れでにぎわっている様子でした。

シーズン10となる今季は、シーズン9から投入されたGen3マシンが引き続き採用される。レース中に必要なエネルギーは少なくとも40%が回生によって賄われる。最大パワーは350kW、最高速は320kmに達する。
ファンビレッジには、広大なフードコートエリアが。レース時はパブリックビューイングとなり、無料でレースを楽しむことができる。

奥に向かうと今度は、壁際のケータリングスペースの前にたくさんのテーブル席が広がり、大勢の人たちがモニターを見つめています。熱気のこもった実況がリアルタイムで伝えるのは、ポジション争いのマンツーマンバトル。フォーミュラE独特の予選スタイルは、難しい知識がなくても十分にドキドキできるようです。

電気自動車×専用マシン×レース、というと、どうしたって「非日常的」で「マニアック」な世界が想像されます。けれど、いわゆる日常的な生活圏のひとつと言える東京都江東区の一角での開催、しかも無料でここまでイベント性を楽しむことができるというのは、そうしたレースに対するハードルを、ずいぶんと下げることにつながっているようにも思えました。

西ホールでのゼロエミッションビークル(ZEV)をテーマとした、子供向けの多彩なコンテンツも、家族連れの集客に大いに貢献していたようです。

東京ビッグサイトのホールを使って、ZEVの世界をさまざまな形で楽しむコンテンツが展開された。

FUN/PLAY/EXPERIENCEなど、体験型のものが多く、そこで実際にハンドルを握って走っている姿を見ていると、「そういえば昔、多摩テックのゴーカートに乗るのが大好きだったな・・・」なんていう、自分がクルマ好きになったきっかけを思い出したりして。

肝心のレースの見どころはなんといっても、日産が地元である日本国内で開催される初イベントで、フォーミュラEシリーズ初優勝を飾ることができるか、というところ。予選では激闘の末に、NISSAN FORMULARE TEAMのオリバー・ローランドがポールポジションを獲得し、一気に「夢」がリアリティを帯びていきます。

ドライバーとマシンの「密な対話」が勝敗を分ける?

レースは4割ほどが一般道で、残りは東京ビッグサイトの駐車場とそこに向かうアプローチを利用した、全長2.585kmの特設コースで行われました。仮説のフェンスが設置されているため、有料の特設観覧席から見る時も、基本的にはスチールバー越しとなりました。

狭いコースに殺到するマシンたち。時に、ぶつからないのが不思議なくらい密集することもあった。半ば過ぎからヒートアップしてくると、もちろん接触も起きるが。

15時スタートの決勝レースは、狭くタイトな特設コースゆえに抜きつ抜かれつ、という展開にはなりにくかった様子です。それでも、決してダラダラと一本調子の編隊走行が続くわけではなく、ほんの一瞬の隙をつくようにインをとり、アウトに被せ、ポジションを上げていく果敢な走りも披露してくれました。

ラグの極めて少ない電気自動車だけに急加速時の動きがシャープな印象で、後続が先んじようとする動きも、それを阻止しようとする先行マシンの反応も素早く、観ている方がある種の緊張感を覚えるシーンすらありました。

「アタックモード」には、画面下のアウト側を通ることで入る。通常は300kWに絞って「燃費運転」しながら、フルパワー(350kWを発揮する一定時間を強制。「スマートドライブ」のハードルを上げることで、バトルを面白くするルールのひとつだ。

一方で、ただ速さで戦巧者を見せつけるだけではないところもまた、電気フォーミュラならではの面白さと言えるでしょう。エネルギーマネジメントとしての効率的な回生を使いこなすとともに、あえてパワーを高める時間(アタックモードと呼ばれています)を強制することで、速さと節約の塩梅にも頭を使わなければいけません。

レースには駆け引きが大切であることはいう間でもありませんが、フォーミュラEのそれはドライバーが人としてマシンを操るのと同時に、マシンがドライバーに「もっとスマートに走らないと、勝てないよー」と働きかけているようにも思えました。

決勝はそんな駆け引きが、勝敗を分けることになりました。結果としてはローランドが2位フィニッシュ。ポディウムの中央には、マセラティMSGレーシングのマクシミリアン・ギュンターが立ちました。

移動時間が少ないと言うことは、心にも環境にもたぶん優しい

アグレッシブでありながらしっかりチャンスをものにする、まさに「スマートなドライブ」が、勝利につながったようです。日常的な運転にも、もしかすると生かせる考え方と言えるかもしれません。

表彰式もまた、かなり派手にショーアップされていた。会場は、ファンビレッジのメインステージだった。
シューシューと花火的な演出も。写真中央は、ウイナーのギュンター。向かって左が、NISSANのローランドだ。

決勝が終わり、観客席から出口に向かう人波は、JMSの賑わいを凌ぐボリュームがありました。聞けば、それなりのお値段がする有料席も販売から3分で即完売、追加分も同じく3分で即完売だったとか?

人気の背景には、日本で初めての国際レースであったことと同時に、やっぱり「地の利」が大きかったような気がします。行きも帰りも、本当にラクチンですから。公共交通機関は、少し混んでいましたけど。

ワタクシ事ですがこの記事は観戦を終えてから、東京新橋の編集部まで戻って書いています。これがたとえば富士スピードウェイだったら現場(プレスルーム)で書いて、帰宅はおそらく日付が変るころ。今日はちゃんと、夕ご飯が自宅で食べられそうです。

ホント、近くて良かった。日常のそばに寄り添う非日常的時間を楽しむのは、移動がもたらすさまざまなストレスも含めて、もしかするととっても環境に優しいことになるのかもしれません。

2024 TOKYO E-PRIX 決勝リザルト

1位 マクシミリアン・ギュンター(MaseratiMSG RACING) 53:34:665
2位 オリバー・ローランド(NISSANFORMULA E TEAM) +0:00:755
3位 ジェイク・デニス(ANDRETTIFORMULA E) +0:01:405

© 株式会社モーターマガジン社