斎藤県政にくすぶる不満? 退職間際の県民局長が知事や側近を中傷する文書 異例の解任劇の裏で何が

人事異動について会見で説明する斎藤元彦知事=27日、兵庫県庁

 兵庫県の斎藤元彦知事や複数の幹部職員を名指しで誹謗中傷する文書を作り流布したとして、県は27日付で、西播磨県民局長だった男性(60)を解任し、退職を取り消した。斎藤知事は「文書の内容は事実無根」と述べ、組織の綱紀粛正を図る。3年前の就任以来、県民や現場からの「ボトムアップ型県政」の浸透を進めてきた斎藤県政。県幹部の「造反」と異例の人事に、県庁の内外から「何が起きているのか」といぶかる声が上がる。

「トントン拍子に昇任」 

 文書は3月中旬、一部の報道機関や議員、兵庫県警に送られた。斎藤知事や、知事に近い幹部職員数人の名前や言動を記し、違法行為などがあったと主張。これら幹部は「トントン拍子に昇任」などとつづられていた。

 県関係者によると、文書を把握した県はすぐに調査。2月に県の体制批判を推測させる局長メッセージを、県ホームページで発信していた西播磨県民局長の存在が浮上した。男性が職場で使うパソコンで文書を作成したとみられ、男性もこれを認めたという。懲戒処分に該当する可能性があるとして、県人事課は急きょ男性の退職を取りやめ、27日付で総務部付とした。

「綱紀粛正が必要だ」

 27日に記者会見した斎藤知事は、文書の内容は虚偽とした上で「組織を立て直すためにも綱紀粛正が必要だ」と強調した。また片山安孝副知事は取材に対し、男性の退職を取り消した人事について「文書はどれも事実無根で、名誉毀損や地方公務員法違反の疑いがある。さらに県民局長という立場の重さを考慮した。職務中の行為でもあり、看過できない」と説明する。

「あらゆる面で変化」

 男性が在任時に発信した局長メッセージは、既に県のホームページから削除され、庁内は重苦しいムードが漂う。ベテラン県議の1人は県の組織風土を「人事異動のルールや政策決定の方法など、20年続いた井戸敏三前知事時代の慣習があらゆる面で変わりつつある。違和感や不満を持つ職員は少なくない」とみる。

 31日付で退職予定だった元県民局長の男性の退職届はいったん受理されたが撤回された。県人事課は「懲戒処分が相当と疑われる事案が発覚したため。裁量の範囲内で合法」としている。

 男性は退職せずに、4月1日以降は「役職定年」で班長級職員として在籍することになるが、退職金の支給額に影響はないという。退職金は60歳時点の給与を基準に算定され、勤続35年という満額支給の条件を満たしているためだ。ただ今後、男性が懲戒免職処分になると退職金は「不支給」になるという。(前川茂之、金 慶順)

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