ギャンブル依存症「根底に孤独や劣等感」 周囲が注意する点、できることは? 森口病院・田中大三院長に聞いた

「ギャンブル依存症への正しい理解が深まってほしい」と話す森口病院の田中大三院長=27日、鹿児島市の森口病院

 米大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手(29)の元通訳水原一平氏(39)を巡る違法賭博問題。米メディアの報道によると、水原氏は自ら「ギャンブル依存症」を告白したとされる。公私で付き合いを重ねた盟友の信頼を崩すほどの病とは何か。鹿児島県が選定する依存症専門医療機関「森口病院」(鹿児島市)の田中大三院長に聞いた。

 -ギャンブル依存症とはどんな病気か。

 「脳の回路に異常が起き特定の行動に対する理性が破壊される病気で、孤独や劣等感が根底にあることが多い。次第に目の前の快楽(賭け事)への優先度が高まり歯止めが利かなくなるものの、他の行動は正常にできる。周囲は言葉を尽くせばギャンブルをやめてくれると信じ病気と気づきにくい。性格や根性論で片付けられる問題ではない」

 -資金獲得やその場をやり過ごすためにうそを重ねるのはギャンブル依存症の特徴の一つとされる。

 「バレれば立場を失うという強い喪失感と見捨てられる恐怖からうそをついてしまうケースが多い。信じてくれていた人を悪意なく、突然、ひどく裏切ってしまう残酷な病だ」

 -周囲が注意する点は。

 「依存症者への家族の間違った手助けで最も多いのは借金の尻拭いだ。依存症者には『ギャンブルで負けた分はギャンブルで取り返す』という共通する思考がある。借金の肩代わりは、かえって依存症者を追い込みかねない」

 -スポーツへの賭け事にも注目が集まる。

 「若者が熱中しやすく依存症に陥るまでが速い。24時間365日どこからでも賭けられるオンラインのギャンブルが増えており、陥りやすく抜け出しにくくなっている」

 -周囲にできることは。

 「必要なのは批判ではなく治療。周囲の支えなしに回復はありえない。誰もが当事者になりえると自覚し、依存症を正しく理解し社会として支える必要がある」

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