美と出合い、晴れやか 現代美術展、じっくりと

作家の個性が光る彫刻作品を楽しむ来場者=金沢市の石川県立美術館

  ●県立美術館、21美で開催中

 金沢市の石川県立美術館と金沢21世紀美術館で開催中の第80回現代美術展(一般財団法人県美術文化協会、北國新聞社、一般財団法人県芸術文化協会など主催)は30日、会期中初の週末を迎え、美術ファンが次々と訪れた。春の陽気の中、来場者は気分も晴れやかに6部門の1103点を見て回り、地元作家陣が紡ぐ美をじっくりと満喫した。

 洋画、彫刻、工芸、写真が展示されている県立美術館は、午前中から愛好者や親子連れでにぎわった。彫刻の展示室では、穏やかな表情をたたえた女性像や人物の動きを細かく表現した鉄の作品が注目を集めた。金沢市在住の祖母と訪れた名古屋市の高校生、前田紗弥さん(16)は「どの作品も個性的だった」と目を輝かせた。洋画を鑑賞した金大名誉教授の石田啓さん(77)は「どれも光の表現が巧みだ」と満足げだった。

  ●被災地の作品に涙

 各部門には能登半島地震で被災した作家の作品も並んだ。岡山県浅口市から足を運んだ会社員小林真由美さん(49)は、娘が油絵を描いているので創作の苦労が分かるとし、「厳しい状況でも作品を完成させた信念の強さが伝わってくる」と涙を流して語った。

 日本画と書の会場となっている金沢21世紀美術館でも多くの人が意欲作に見入った。

 金沢で避難生活を送る珠洲市宝立町の江髙惠子さん(72)は地滑りの影響で自宅に住めなくなった。避難先でしたためた書を出品し、入選した。この日は家族と会場を訪れ、「生かされていることへの感謝と、支えてくれる人たちに恩返ししたいとの思いを込めた」とほほ笑んだ。

 同展では県美術文化協会の役員・会員による委嘱作402点、遺作3点、一般の部で入選した684点のほか、過去10年の美術文化大賞受賞作などが展示されている。会期は4月15日まで。入場料は一般千円、高校・大学生700円、小・中学生は600円となる。

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