復帰戦でもやはり規格外だった川崎FWエリソン。相手をなぎ倒すプレーを支える弛まぬ努力

[J1第5節]川崎 3-0 FC東京/3月30日/Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu

FC東京との多摩川クラシコの4日前、公開されたトレーニング。雨が降りしきり、全体練習を終えた選手たちが足早にクラブハウスへ向かうなか、ピッチでひとりダッシュを繰り返す男がいた。

負傷明けのFWエリソンである。今季加入した24歳の新ストライカーは開幕からゴールを順調に重ねたが、欠場した直近の2試合でチームは敗れるなど3連敗を喫していた。

チームのためにも早くコンディションを戻したいとの想いがあったのだろう。何本もダッシュを繰り返すなか、最後は鬼木達から「もう終わりにしよう」というジェスチャーを向けられ、エリソンはグラウンドを引き上げていった。彼のプレーの裏にはこうした弛まぬ努力があるのだろう。

その誠実さは加入直後から称賛されていた。ACLでチームがまさかの早期敗退した際には涙し、2節の磐田戦(●4-5)では、ハットトリックがかかっていた状況でキッカーに名乗り出たFW山田新にPKを譲る姿も話題になった。メディア対応も実に真摯で、練習試合では自分の出番を終えても、チームメイトのプレーを見守るという。

【動画】山内のクロスから山田がゴール&脇坂の先制弾

もっともピッチに立てば180センチ・83キロの自慢のフィジカルを生かし、獰猛にゴールへと迫る姿が光る。

連敗ストップを懸けて臨んだFC東京との“多摩川クラシコ”では、自身にゴールは生まれなかった。それでも後半には裏に抜け出すと、相手の守護神・波多野豪と交錯。GKを退場に追いやり、数的を優位をもたらすなど3-0の勝利に貢献したのだ。

何より大きいのはゴールへ向かうその迫力である。相手DFにプレッシャーをかけ続けマークを引き連れるだけに、自然と味方がプレーしやすくなる。粗削りな面も多いが自身はDFふたりに付かれても、相手をなぎ倒すように強引に突破するパワーがある。

チームはまだ過渡期で、越えなくてはいけない壁は多いが、このストライカーの復帰はかなり大きいと言える。そんなFC東京との一戦でもあった。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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