『ドラゴンボール』から『ONE PIECE』『呪術廻戦』まで……ジャンプ漫画、熱すぎる“総力戦”のエピソード

バトルマンガでは、必ずしも1対1のタイマン勝負が描かれるわけではない。主人公と仲間たちが力を合わせて、1人では敵わない強敵を倒そうとする……。そんな複数対1の“総力戦”に、胸が熱くなったことがある人は多いのではないだろうか。

実際にこれまでさまざまな作品が、総力戦のバトルを描いてきた。今回は『週刊少年ジャンプ』(集英社)の連載作品から、その系譜を辿ってみよう。

たとえば『ドラゴンボール』は、誰もが認めるバトルマンガの金字塔だが、同時に総力戦を描いたマンガの代表格でもあった。地球に襲来したサイヤ人・ラディッツとの戦いでは、孫悟空とピッコロが共闘した上、激怒した悟飯が攻撃を加えていたため、実質3対1のような状況。その後も仲間たちがバッタバッタと倒されていったナッパ戦、ヤジロベーが意外な活躍を見せたベジータ戦など、サイヤ人との戦いはなりふり構わないものばかりだ。

1対1にこだわらない戦い方はさらに発展していき、フリーザやセルなど、大ボス級の敵が相手となる時には、その都度限界まで戦力をかき集めて対峙している。逆にいうと、「そこまでしなければ勝てない」という絶望感のある状況が読者に緊張感を与えているとも言えるだろう。

そして最後の魔人ブウ戦に至っては、元気玉を介して、地球人全員が力を合わせる戦いが描かれることに。地球規模の総力戦ということになるため、桁外れのスケール感だ。

同時代に連載された『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』も、バトルの展開は『ドラゴンボール』に近い。仲間たちと協力して1人の強敵を攻略する……というパターンが多いからだ。しかもラストバトルでは人類が力を結集する展開もあった。

この頃に作られた黄金パターンは現代でも十分通用するようで、『鬼滅の刃』においても鬼を倒すために複数人の鬼殺隊が力を合わせる展開がお決まりだった。敵が分身したり複数の敵が一緒に襲撃したりと、イレギュラーなバトルも多かったものの、終盤は悲壮感すら漂うほどの総力戦が描かれている。

タイマンが多い『ONE PIECE』にも例外があった?

そうした系譜とは対称的に、現在の『週刊少年ジャンプ』の看板マンガである『ONE PIECE』は、タイマンでの戦いが多いように見える。大ボスを倒すのは、基本的には船長であるルフィの役目だ。

しかし物語が進むにつれて例外も増え、スリラーバーク編では「麦わらの一味」による総力戦という珍しい展開が登場。またワノ国編では、カイドウとビッグ・マムという2人組が相手だったものの、ルフィが複数人の仲間たちと協力して戦うところが描かれていた。

『ONE PIECE』と同じように、“特別な強敵”と戦う際にだけ総力戦を採用するバトルマンガも多い。具体的には、『るろうに剣心』の志々雄真実戦や、『封神演義』の聞仲戦などが挙げられるだろう。いずれも絶望感を煽る演出として、かなり効果的だった。

また『NARUTO -ナルト-』の終盤では、それまで登場した忍たちが共闘する壮大なバトルが待ち受けていた。あらゆる因縁を乗り越えていくような展開に、多くの読者が胸を打たれたことは言うまでもない。

現在連載中のジャンプマンガでも、『呪術廻戦』や『僕のヒーローアカデミア』などは、総力戦によってクライマックスの盛り上がりを演出している。今後もバトルマンガにおけるある種の王道パターンとして、変奏されていくのかもしれない。

(文=キッゥトン希美)

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