川栄李奈「自分の役者人生のなかで、すごく大きなものになるんじゃないかな」舞台『千と千尋』で大きく変われる予感

川栄李奈 撮影/冨田望

2010年、AKB48研究生として公演に立ったことをきっかけに、芸能界でのキャリアを築いてきた川栄李奈。2015年にAKB48を卒業して以降は、俳優として活躍。上白石萌音、深津絵里らとトリプル主演した2021年の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』、同年の大河ドラマ『青天を衝け』をはじめ、その実力を認められてきた。現在も動画投稿サイトなどで話題を呼んだ、ウェブライターでユーチューバーとしても活動する雨穴による書籍の映画化『変な家』で、その巧さを十分に見せている。そんな川栄さんのTHE CHANGEとはーー。【第3回/全4回】

「出遅れている感がすごくて、不安しかないんですけど」

そう苦笑いした川栄さん。

現在、映画『変な家』が大ヒット公開中の川栄さんだが、早くから大きな注目を集めていた、橋本環奈、上白石萌音、福地桃子とクワトロキャストで主演を務める舞台『千と千尋の神隠し』もスタートしていた。しかし川栄さんの千尋としての初日は、3人から遅れての27日。取材したのは、そこに向けて稽古の日々が続いている時だった。

これまでに「朝ドラのヒロインを演じる」「大河ドラマに出る」との目標を掲げて、見事に叶えてきた川栄さんだが、そういえば、海外に関連した目標はあまり聞いた記憶がない。本舞台は、日本での地方公演の後、ロンドン公演も決まっている。

「確かに海外にという目標は今までなかったですね。そもそも舞台にあまり出てこなかったですし」

――しかしAKB48を卒業してすぐに、『AZUMI』で舞台に立って評価を得ました。

「舞台はやっぱり大変ですし、出る前にすごく緊張しちゃって、あまり“楽しかった”と終われたことがないんです。プレッシャーのほうが強くて。舞台が好きですと言えるほどの経験もないですし、実は今まであまり出ないようにしていました。でも今回、5年以上ぶりに舞台に立たせてもらいます。帝国劇場、そして地方と海外。すごく貴重な経験だと思います。今しかできないことだと思うので、楽しんで終われたらなと思っています」

ロンドン公演は日本より逆に緊張しないのかも

――舞台はプレッシャーが大きいけれど、それでも今回の舞台はやらねばと。

「(上白石)萌音ちゃんの初演の舞台を観ていたんです。そのときに凄さを感じていたので、やりたいと思ったのだと思います」

――ロンドン公演へ向けてはいまどんな気持ちですか?

「日本でやるよりも逆に緊張しないのかなと思っています。皆さん、私がどんな人間かも知らないし、年齢もよく知らない。本当に千尋として舞台に立てると思うんです。だからロンドン公演への緊張はそんなにしていないです。日本で立つほうが、“川栄が千尋をやる”というプレッシャーがあると言いますか。“29歳が10歳を”みたいに見られるかなとか(笑)。いろんな想像をしてしまいがちなんですよね。ちゃんと完ぺきな10歳に仕上げないと、と思ってしまったり。なので、自分を知られていないところに行くほうが、役として伸び伸びできるんじゃないかなと思っています」

――では、舞台は「今まであまり出ないようにしていた」とのことですが、今回、海外公演という新たなチャレンジが加わったことによって、逆にワクワクに転じそうですか。

「ワクワクというか、海外に行ってお芝居を見せるというのは、初めてのことです。その経験は、自分の役者人生のなかで、すごい大きなものになるんじゃないかなと思っています」

いま現在も、俳優として着実に評価を受けてきている川栄さんだが、この舞台でさらに大きなものを得て「CHANGE」するかもしれない。作品を受け取っていく側としても、とても楽しみだ。

川栄李奈(かわえい・りな)
1995年、2月12日、神奈川県出身。2015年にAKB48を卒業してほどなく、舞台『AZUMI幕末編』、翌年『戦国編』で主演を務めて好評を得る。その後連続テレビ小説『とと姉ちゃん』(NHK)『3年A組‐今から皆さんは、人質です‐』(NTV)大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK)『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日)などに出演。トーク番組『A-Studio』では10代目のアシスタントを務めた。ほか主な出演作に映画『亜人』『センセイ君主』『恋のしずく』『泣くな赤鬼』、ドラマ『夕凪の街 桜の国 2018』『青天を衝く』『となりのナースエイド』など。現在、映画『変な家』が公開中、舞台『千と千尋の神隠し』で千尋役を演じている。

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