業務用コーヒー、高値でも引き合い強まるサステナブル製品 水素焙煎コーヒーや紙製カップで商機探るUCC

UCCグループで業務用サービス事業を展開しているUCCコーヒープロフェッショナルは、環境などに配慮したサステナブル製品で商機を探る。

川久保則志社長は3月26日、展示商談会「UCC Smile Festa2024」の東京会場で記者発表会に臨み、業態によって温度差はあるものの、特に外資系ホテルなど海外顧客からサステナブル製品・サービスへの引き合いが強まっていることに触れる。

中でも「水素焙煎コーヒー」については「当面は設備投資を要するなどコストがかかり単価も上がるわけだが、お取引先様から“単価よりも、そういうもの(サステナブル)を優先する”というお声をいただく。特に海外のお客様はサステナブルにもの凄く敏感」と語る。

プラスチック削減のオリジナル紙カップ 「お店のための エンボスカップ(紙製)」についても、通常のプラスチックカップに比べ単価が倍近くするものの「想定以上に伸び代がある」との手応えを得る。

プラスチック削減のオリジナル紙カップ 「お店のための エンボスカップ(紙製)」

一般的にカップは、口径が容量やメーカーごとにほぼ異なるため、リッド(蓋)がそれぞれに必要となり取扱アイテム数が増えがちとなる。

その点、「お店のための エンボスカップ(紙製)」はカップ口径を統一しリッドを共通で使用できるのが特徴。
これにより、カフェなどの運営において保管スペースの縮小やサイズの異なるリッドの発注ミス削減などが見込める。

サステナブル資材は全般的に高値傾向にあることから、新規出店する取引先に導入余地を見込むのは橋本樹一郎取締役副社長。

「既存のコスト構造でサステナブル資材を活用しようとするとコストアップになり、なかなか踏み出しにくい。しかし、新店の場合はコストアップを全て織り込んで設計するため、受け入れていただきやすいと考える」と述べる。

コーヒー豆などの原材料価格が高騰する中、同社は取引先との共創による付加価値提案を通じた単価アップに注力している。

橋本副社長は、付加価値提案の必要性について、コロナ禍の3年間で家庭内コーヒーに求められる品質が向上したことを背景の1つに挙げる。

「お店で2019年以前と同様のクオリティのコーヒーを提供した場合、“せっかくお店に入ったのに新しい発見がない”となってしまう」と指摘する。

UCCコーヒープロフェッショナルの川久保則志社長

業務用コーヒー市場は19年の水準には届かないものの飲用杯数ベースで回復傾向にある。
金額ベースでは価格改定の浸透により飲用杯数を上回る伸びで推移しているとみられる。

川久保社長は「世の中がインフレ基調に入り、お取引先様が単なる値上げではなく付加価値を提案していくことがテーマ。当社は(全取引先の)約90%で値上げをさせていただき、お取引先様も値上げをされた」と振り返る。

外食産業全般でも同様の動きが起こったとみられ、ホテルや大手チェーンで顕著にみられるように客数が減る一方で客単価が増加する傾向にある。

外食産業の喫緊の課題には人手不足を挙げる。

「お取引先は本当に切実な思いで人手不足に悩まれている。これからは、人手の確保とともに人件費の高騰が立ちはだかる。人件費を上げざるをえない状況で、ますます企業間格差や店舗間格差が広がる」との見方を示す。

展示商談会では、人手不足解消に向けた提案として、コーヒーマシンやワンオペで提供できる食材などを多彩に提案していた。

「choito」のエプロン

なお、展示商談会内では紙容器アップサイクルの仕組みづくりにも挑戦。

村尾香織販売企画本部課長は「アップサイクルは単発で終わりがち。これを変えるべく今回、新たな挑戦として、展示商談会の中での資源の循環を実現させる取り組みを行った」と説明する。

会場には、使用済み飲料用紙容器の古紙入り紙糸を用いた布製品「choito」のエプロンを展示。

これは、昨年の展示商談会での試飲した使用済み紙カップを実証実験として回収・洗浄し、表面のプラスチック膜を分離除去した原料古紙を一部使用して紙糸をつくり、綿糸とともに布に織り上げたものとなる。日本製紙グループの日本紙通商と共同でアップサイクルした初めての事例となる。

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