柏屋本店朝茶会4月1日で500回 薄皮饅頭、茶を無料振る舞い50年 福島県郡山市

薄皮饅頭を作る職人。当日は出来たてが振る舞われる

 福島県郡山市のJR郡山駅近くの柏屋(本社・郡山市)の本店2階は毎月1日早朝、住民やサラリーマンらの笑顔があふれる。出来たての薄皮饅頭(まんじゅう)や茶を無料で振る舞う「朝茶会」は、4月1日に500回の節目を迎える。50年前の開始当初を知る会長の五代目本名善兵衛さん(69)は節目を喜びながら、「これからも市民の縁側のような場所としてあり続けたい」と継続を誓う。

 「寄ってお茶でも飲んでがさんしょ」。柏屋の社員が出勤途中の会社員や通行する市民に呼びかける。毎月1日、なじみの風景だ。店内は優しいあんこの香りが漂う。

 柏屋によると、郡山市が宿場町だったころから地域では毎朝、地域住民らと縁側で茶を楽しむ風習があったという。習慣を月に一度だけでも残そうと四代目の故本名善兵衛さんが1974(昭和49)年、友人らに茶を振る舞うようになったのが会の始まりだった。参加条件は「おはよう」と「行ってきます」の元気なあいさつだ。

 口コミで広がり、市民の憩いの場として利用者が増えていった。いつもより一本早い電車に乗り、列をつくる女子高生の姿も。会での出会いをきっかけに結婚した夫婦も誕生した。

 2011(平成23)年3月、東日本大震災で本店ビルが被災し、中断を余儀なくされた。「こんな時だからこそ、いつもの場所を提供したい」と、夏に再開させた。2020(令和2)年には新型コロナウイルスの感染症が拡大。朝茶会は3年5カ月間、中止せざるを得なかった。「街の風物詩が消えて寂しい」。市民らの声に応え、昨年7月に再開を果たした。

 本名さんは「特別な日でも、いつも通りの時間を届けたい」と節目を振り返り、目を細める。まんじゅうに真心を包み、地域住民らを待つ。

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 朝茶会は毎月1日午前6時から同8時まで、郡山市中町の柏屋本店2階で開いている。柏屋は500回を記念し、思い出のエピソードや写真などを募っている。

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