【霞む最終処分】(29)第5部 福島県外の除染土壌 千葉・柏㊤ 中核市の地中に〝潜む〟 市有施設など600カ所余

除染土壌が埋められている柏市内のグラウンド。周囲に埋設を知らせる案内板などはない

 廃炉作業が進む東京電力福島第1原発から南に200キロほど離れた千葉県柏市。首都圏のベッドタウンとして開発され、約43万人が暮らす中核市だ。主要駅周辺は大規模な商業施設や高層マンションが立ち並び、人々が足早に行き交う。原発事故とは無縁の日常が広がるが、市有施設や住宅などの地中600カ所余には今も、除染土壌がひっそりと眠り続けている。

 市南部にある公共施設のグラウンドの隅には、除染土壌約300立方メートルが埋められている。地表から約30センチ下に遮水シートで包まれて保管され、10年ほどが経過した。周囲に埋設を知らせる案内板などは設置されておらず、住民の関心が向くことはほぼない。

 近くを散歩していた60代男性は「除染で出た土が今も埋まっているとは驚きだ。安全と言われても、あまり気分が良いものではない」と表情を曇らせた。

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 2011(平成23)年3月に起きた原発事故では福島第1原発の建屋外に放射性物質が飛散。風の影響で柏市にも到達したとされる。市内では同年10月、市有地の土壌から最大で1キロ当たり27万6千ベクレルの放射性セシウムが検出された。現地を調査した文部科学省放射線規制室長(当時)の中矢隆夫は「原発事故由来の放射性セシウムを含んだ雨水が濃縮され、土壌に蓄積した」との見方を示した。市民に混乱が広がる中、市の対応は「原発が存在せず、除染などの知識は全くない状態」(市環境政策課)から始まった。

 環境省は同年12月、柏市などを国の財政負担で除染を行う汚染状況重点調査地域に指定した。市は学校や保育園、公園、スポーツ施設など約800カ所で表土の剥ぎ取りや高圧洗浄を実施した。

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 柏市の除染は2014年3月末までに完了。除染土壌は千葉県内で最多となる4万6447立方メートルが発生し、現場にとどめ置かれることになった。

 福島県の場合、県内の市町村の除染作業で生じた土壌や廃棄物は中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)に搬入され、2045年までに県外で最終処分されることが法律に明記されている。

 一方、福島県外の除染土壌や廃棄物に関しては放射性物質汚染対処特措法に基づく基本方針で「除染土壌が生じた都道府県内において処理するものとする」とされているが、処分に関する具体的な基準はいまだに示されていない。

 最終処分の手法が定まらない中、柏市では民有地に埋めていた除染土壌が紛失し、管理の在り方が問われる事態も生じた。(敬称略)

 東京電力福島第1原発事故に伴う除染は福島県内のみならず、県外でも広い範囲で行われた。地面から剥ぎ取られた土壌などは今も保管が続き、最終的にどう処分するかは決まっていない。県外の除染土壌を取り巻く現状を探る。

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