給食、13市町村で完全無償 県内小中学校、24年度方針

 子育て世帯の負担軽減を目的に、県内の市町村で小中学校の給食無償化の取り組みが広がっている。山形新聞のまとめでは、2024年度は計21市町村が完全無償化などの対応を取る方針だ。無料にできなくても、食材費高騰分を公費で補い、給食費を据え置く市町村もある。自治体ごとに対応に差が生じ、有識者からは「義務教育を進める上で給食が不可欠ならば、国の財源で無償とすべきだ」との指摘もある。

 24年度に無償化を予定する県内市町村の状況は表の通り。完全無償化、または対象者を第3子以降とするなど、市町村によって実施内容は異なる。南陽市は保護者の所得に応じ、第3子以降の補助率が変わる。新庄市は第3子以降は無償、第2子は半額にする制度となっている。

 各市町村はふるさと納税などを活用した一般財源で工面している。既存事業を見直し、24年度に初めて無償化に踏み切る米沢市は3億4600万円の予算規模だ。同様に中学校で初めて完全無償化とする東根市は「ふるさとづくり基金」を活用する予定。

 無償化を予定していなくても、物価高騰分を国の交付金などで補填(ほてん)し、給食費を据え置く自治体は多い。山形市の担当者は「無償化には10億円ほどの予算が必要となる」と話し、他の子育て関連施策の充実を図って対象世帯をサポートしていると説明する。無償化の有無にかかわらず、「国で一律の補助があれば助かる」「基礎自治体が使える財源は限られている」との声もある。庄内町は24年度に無償化に取り組むが、期間は半年間のみだ。担当者は「通年無償化は負担が大きい」と話す。

 山形大人文社会科学部の坂本直樹教授(48)=経済学=は、「人口減少に伴い移住促進の面でも自治体にとって重要な施策。多くの自治体が無償化にし、やらざるを得ない所もあるだろう」と分析する。無償化で財政負担を強いられ、間接的に他の行政サービスの水準が下がってしまう懸念もあると指摘する。標準的な給食の提供に向け、必要経費は国の財源を使い「地産地消や食育の観点で自治体間の良い競争を促す環境を整備すべきだ」と述べた。

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