国府宮はだか祭に奉納する「大鏡餅」 高さ約2.4m・重さ4t、大人80人が全身全霊で餅つき 稲沢市

80人の大人が全身を使って巨大鏡餅を作る

愛知県稲沢市の尾張大國霊神社で行われる「国府宮はだか祭」は、天下の奇祭としても知られる愛知有数の祭り。数千人のはだか男たちが揉み合う厄除けの神事は、1250年以上にわたり続けられてきました。

権禰宜を務める角田成人さんによると、揉み合いの前日にお供え物として奉納する「大鏡餅」も見どころ満載だとか! 今回は大鏡餅の奉納に密着しました。

(※角田の「角」は正式にはクに用)

2024年はあま市が大鏡餅を奉納

あま市奉賛会副会長・加藤文彦さん

「国府宮はだか祭」に奉納するのは、高さ約2.4メートル、重さ4トンもある超巨大な大鏡餅。この大鏡餅は毎年異なる地域が奉納していて、2024年はあま市奉賛会が奉納を担当します。

あま市では市役所の新庁舎が完成。そこで、新庁舎完成を記念したこけら落としとして大鏡餅の奉納を行うことになりました。しかし最後に奉納してからすでに10年以上が経過していて、奉賛会のメンバーにもほとんど経験者がいません。

過去の記録や先代の話を頼りに準備をするので、リーダーを務めるあま市奉賛会副会長・加藤文彦さんの口からは不安の言葉がこぼれます。

4トンもの大鏡餅はすべて手作り!

忌火

大鏡餅の準備を担うのは約80人の有志たち。奉納当日から17日前となる2月4日には、餅つき会場となるあま市役所の駐車場で地鎮祭が行われ、いよいよ本番モードに突入します。

地鎮祭のあとに行われたのは、神様へのお供え物を調理するための大切な火を確保する「忌火式(いみび)」。大きなレンズで太陽の光を集めて火元を作り、米蒸しをはじめとした餅つきの際に使われる火を確保します。

餅米を蒸す釜は24個、餅をつく石臼は13基も用意

奉納5日前の2月16日、いよいよ餅つきの当日です。早朝4時から餅つき会場には続々と人が集まってきます。忌火式でとった炎を松明に移して、餅米を蒸す釜に火入れ。4トンもの大鏡餅を作り上げるために餅米を蒸す釜は24個、餅をつく石臼は13基が用意されました。

“無限餅つき”に

3時間かけて餅米を蒸し上げるといよいよ餅つきがスタート。「よいしょー、よいしょー」と声をかけながら、一斉に杵が振るわれます。

作り上げる餅は1カ所に集められ、大人数で1つにこねます。使われる米は50俵、重さにして4トンにもなる大鏡餅を完成させるには、たくさんの人手が必要になるのです。

成形にはクレーン車も登場

餅も人間もひっくり返す

餅をこね終えると、いよいよ成形作業です。何人もの男たちが大きな餅に体当たり、中央へ餅を集めます。するとそこに登場したのが大きなクレーン車! 台の両端にロープをくくりつけて台ごと持ち上げ、さらに男たちも総力を結集して餅をひっくり返しながら丸めます。

超巨大鏡餅が完成

全身を使いながら転がして丸めた餅は、周囲に布を締め上げて円形に。ようやく直径2.4メートル、厚さ40 センチの下餅が完成します。その上には同じように作った上餅をのせ、さらにひし餅を2枚重ねます。

ひし餅の上にのせる「だいだい」も手作りで準備。水・寒天・砂糖・白あんを温めながら混ぜ、着色料で色づけしたものを冷やし固めれば重さ450キログラム、ようかん1000本分にもなる巨大だいだいの完成です。出来上がった大鏡餅は2メートル35センチもの高さになりました。

いよいよ奉納当日 無事に楼門をくぐれるか

派手に飾り付ける

大鏡餅が出来上がると、今度は飾り付けの作業へ。長寿や立身出世の縁起物である活伊勢海老や、1つのことを最初から最後まで全うする縁起のある鯛、幸せを“かき”集める干し柿など、縁起の良いものを飾りつけます。

大鏡餅パレード

80人がかりで完成した大鏡餅は、奉納する前に市民にお披露目。大鏡餅を載せたトラックが、あま市内をパレードします。

12年ぶりにあま市内をパレードする大鏡餅の姿に市民たちも大歓喜! 子どもたちも「将来やってみたい」と元気よく話します。

最後は人力で奉納

いよいよ奉納当日の2月21日。当日はあいにくの大雨ですが、それでも力を合わせて大鏡餅の奉納へと向かいます。

雨に濡れないようしっかりビニールで覆われた大鏡餅が参道に到着。しかし、車両は参道の途中までしか入れないので、台車に載せ替えて人力で引っ張ります。

思わず感極まる加藤副会長

じつは途中の楼門のサイズに合わせるため、大鏡餅の高さが約2.4メートルなんだとか。幅も高さもギリギリなので、楼門をくぐる際にはいっそうの慎重さが求められます。

降りしきる雨の中、加藤さんの合図で楼門をゆっくりと進む大鏡餅。無事に通過すると、クレーンで吊り上げていよいよ拝殿へと奉納します。

こうしてあま市の大鏡餅は無事に奉納。「これでヘタこいたら、この街に住んでいられなくなる」とプレッシャーを一身に背負い続けてきた加藤副会長は、無事に奉納が終わり目に涙を浮かべていました。

© テレビ愛知株式会社