運転手の労働時間規制を強化する「2024年問題」に対応するため、長崎自動車(長崎バス)と県交通局(県営バス)は1日から、長崎市内の本原、矢の平、目覚、立神の4地区で競合路線を一元化する。このうち目覚地区は、最終便の大幅な繰り上げや運行区間の短縮など影響が大きく、沿線住民には不満も残る。斜面地ならではの狭隘(きょうあい)な道路事情もネックとなっている。
立山と中央橋を目覚町経由で結ぶ路線からは、長崎バスが撤退し、県営バスのみが運行する。区間も長崎駅前までに短縮され、立山-中央橋は駅前で新たな乗り換えが生じる。駅前から立山に向かう最終便は、現行より約1時間20分繰り上がる。
途中の上銭座町で暮らす大隅旭さん(86)は「市役所に行くのに乗り換えが必要となり、時間も運賃も余計にかかる。(長崎バスの廃止で)宝町を通らなくなり、路面電車への乗り換えも不便」と憤る。自宅はバス通りに面した比較的便利な立地だが「沿線住民の多くは階段を利用し、タクシーも横付けできない。高齢者にとって、乗り換えは大きな負担だ」。
銭座地区で自治会長を務める中村住代さん(77)は最終便繰り上げを問題視。実際、最終便に乗車を繰り返すと、毎回10人程度の乗客がおり、「これから、この人たちはどうするのだろうと心配。斜面地に暮らす私たちにとって、公共交通は大切な移動手段。あまりにダメージが大きい」と訴える。官民でつくる市公共交通活性化協議会も「目覚地区での最終便繰り上げは利便性が著しく低下していると言わざるを得ない」と指摘した。
区間短縮について県営バスは、長崎バス廃止後も、1時間1往復程度の運行頻度を維持するために必要な措置と説明。立山方面からの乗客の約8割が駅前までに降車するほか、諏訪神社前経由で中央橋へ向かう路線で代替手段が確保できることも判断材料に挙げた。また立山-目覚町は道路が狭く、車両が中型バスに限られるため、他地区と比べ調整が難しいという。
大隅さんと中村さんは「利便性の低下で、斜面地はますます衰退するのではないか」と口をそろえる。