栃木県に「紫の襲撃」 人気YouTuberしるこさんのイベントに参戦 “聖地巡礼”で県内に経済効果 独占インタビューも

イベント会場周辺に集まったしるこさんのファンたち

 全国的な人気を集める栃木県在住のYouTuber(ユーチューバー)「しるこ」さんのファンミーティングイベントツアーの栃木公演が15日、宇都宮市明保野町の宇都宮市文化会館で開かれた。全国10都市を巡るツアーの一つで、能登半島地震の影響で中止となった石川公演の代わりとして急きょ追加公演が決まった。イベントやファンの声を詳報するとともに、しるこさんの紹介が観光地にもたらした“経済効果”も紹介する。

 しるこさんは2019年にゲーム実況系グループ「BinTRoLL(ビントロール)」を立ち上げ、ゲーム実況を中心にユーチューバー活動を開始。大ヒットアニメ「鬼滅の刃」の主人公「竈門炭治郎(かまどたんじろう)」役などで知られる声優の花江夏樹(はなえなつき)さんのチャンネルの主要メンバーとしても活動している。

 顔や詳細なプロフィルは公開していないが、2023年に初のファンミーティングイベントを実施。歌手デビューやエッセー本の刊行も行った。現在はYouTube配信のほかに文化放送でラジオ番組を持つなど、マルチに活躍している。

 この日は、平日にもかかわらず、開場の3時間以上前から多くのファンが会場周辺に集まった。Xなどで知り合いになったというファンたちは、自作のオリジナルグッズやお菓子などの交換をしながら、公演までの時間を有意義に過ごしていた。

 石川公演に参加予定だった愛知県西尾市、会社員女性は「石川公演は残念だったけど、仕方ないという気持ちが強かった」と被災地に思いをはせた上で、「追加公演が決まったときは、栃木県は特別な場所だから『何が何でも行かなきゃ』と思った」と話した。しるこさんの魅力を尋ねると「寝落ちできるほど癒やされる声がいい!ポケモンスリープみたいな『しるこスリープ』できたらいいのに」と熱く語った。

 開場2時間前には、会館内にツアーグッズの販売所が設けられた。販売所に一番乗りしたのは東京都から来た女子高生2人組。2人は「どのグッズも良過ぎて、大人になったら買い占めたい」「今日は前回の栃木公演でしるこさんが紹介してくれたソフトクリームを食べてきた。泊まりで来たので、明日も聖地巡礼したい」などと意気込んでいた。

 会場では、しるこさんのイメージカラーである紫のペンライトやグッズ、うちわなどを持った約1400人のファンがしるこさんを笑顔で出迎えた。つなぎ姿の衣装に身を包んだしるこさんがぬいぐるみを抱えて登壇すると各所から「かわいい」と歓声が上がった。

 イベントでは、しるこさんが県内の観光名所などを紹介。宇都宮市大谷町の「ベルテラシェ大谷」や、茂木町桧山の「モビリティリゾートもてぎ(MRM)」などで行ったロケの様子を公開した。

 ベルテラシェ大谷で行った大谷石のカエルの絵付け体験で、しるこさんは独特のセンスを発揮。ファンの反応に不満を持ったしるこさんが「かわいいっていう感想以外認めないから!」と発言すると、会場は笑いの渦に包まれた。

 そのほか、抽選で選ばれたファンの席へしるこさんがお土産を手渡しに行くコーナーや、ファンが登壇して栃木県限定のお菓子や飲み物を飲むコーナー、出張ラジオなどが行われ、至近距離での交流にファンたちは大興奮だった。アンコールでは、しるこさんが生歌を披露した。

 公演終了後、ファンに感想を聞いた。東京都板橋区、飲食業男性(32)は「言葉が出ないくらい最高だった。今日来て良かった」と感無量の様子。今ツアー4公演目の参加という埼玉県川口市、会社員男性(37)は「他の会場よりホーム感があって楽しかった」と笑顔を見せた。

 イベントから一夜明けた16日には、県内の土産物屋や観光名所に多くのファンが訪れた。ベルテラシェ大谷にある体験館の担当者高内麻八(たかうちまや)さん(62)は「こんなのはじめて」と驚きの声を上げた。高内さんによると、午前中からカエルの絵付け体験の問い合わせがあり、閉店間際まで来客が続いた。同じ紫のバックを持つ人が立て続けに来店したため共通点に気付き、来店客からイベントがあったことを知らされたという。

 高内さんは「しるこさんの影響力の強さを実感した。遠方から来る人も多かったので、これをきっかけに全国へ大谷石の魅力が広がってくれたらいいなと思います」と喜んでいた。

 イベントでお土産としてファンに渡された商品を求める人も多かった。ギョーザと恐竜ステゴサウルスを掛け合わせた陶器のキャラクター置物「ぎょうざうるす」もその一つ。置物の商品化や販売を手がけている宇都宮市大通り3丁目の酒井商店では、お土産として紹介された商品が1日で1カ月分が売れるほどの人気ぶりを見せ、通販では売りきれる商品が出るほどの反響があった。

 同店の製作販売担当者によると、この日はちょうどぎょうざうるすの新作発売日ではあったが、普段より来客数が多く、ファンなどから、イベントやしるこさんの存在を聞き知ったという。担当者は、「来店したファンの人たちの礼儀正しさや優しさに驚いた。『コラボしてほしい』と言ってくれる人もいて、うれしかったです」と笑顔を見せた。

 今回のツアーで全国各地から集まった「紫の襲撃」の影響は大きかったようだ。栃木県の魅力発信の観点からも、今後のしるこさんの活躍から目が離せない。

 

 -中止となった石川公演への思いを教えてください

 「石川県は初めて行く予定の場所でしたし、ビントロールメンバーの出身地の一つでもあります。今回の中止は仕方のないことではありますが、楽しみにしていた分、残念でした。海鮮がおいしいところらしいので、また機会があれば行ってみたいです」

 -栃木での追加公演が決まった理由は

 「栃木公演は前回のツアーでも人気が高く、今回は関東周辺の公演が前回より少なかったこともあって、栃木での公演を決めました。地元だと、時間的なゆとりもあるし、『いらっしゃい』という気持ちで臨めました」

 -栃木県内でのロケはどうでしたか

 「今回のツアーのロケは物作り系とアクティビティ系の二つを軸に構成されていたのですが、普段家からなかなか出ない自分にとってはどちらのロケ先もすごく新鮮で楽しくいい経験になりました」

 -昨年に引き続き、全国を巡るツアーとなりました。イベント全体の感想は

 「終始楽しかったです。来てくれた人が楽しんでくれるのが楽しいし、イベントきっかけで友達になっていくファンの様子や、SNSでファンが聖地巡礼している様子を見るとさらに楽しくなりますね」

 -下野新聞が行った栃木県150周年アンケートで「とちぎの好きなところ」1位になりました

 「最初はいいのかな?って思いました。組織票みたいになってないかなって?笑。でも、そう答えてくれる人がたくさんいたのは素直にうれしかったです。栃木県の仕事くるかなぁ笑」

 -ファンに向けて一言お願いします

 「10年後も、20年後も、100年後も、マウスが握れなくなるまで活動を続けていくので、みんなも足腰立たなくなっても付いてきてね!」

自作のグッズやお菓子などを交換して交流するファンたち
紫色の装いで子どもと一緒に参加したしるこさんのファン
イベントグッズのペンライトやうちわを持って栃木公演を楽しむファン
MRMでのエピソードを語るしるこさん
栃木公演を楽しむファンたち
ストロベリーソルト味のポテトチップスを食べたファンに感想を聞くしるこさん(右)
餃子サイダーを飲んだファンに感想を聞くしるこさん(右)
ベルテラシェ大谷にある体験館
ぎょうざうるす
栃木公演用の衣装を着たしるこさん

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