「運転手減少で泣く泣く決断」2024年問題で路線バス減便や縮小、廃止が青森県内で相次ぐ

「2024年問題」に対応するため、4月から減便する県内バス事業者も。写真は弘前駅前のバスプールで客を乗せる弘南バス=3月22日

 時間外労働(残業)の上限規制の適用業種が4月1日から広がることで人手不足の深刻化が懸念されている「2024年問題」で、青森県内のバス事業者らが同月からの路線バスの減便や縮小、廃止を相次いで決めた。運転手1人当たりの労働時間が減る分を新規採用で補うことも難しく、現行の運行体制を維持できないためだ。「乗客に迷惑をかけるが、便数を減らすしかない」。事業者は苦しい事情を明かす。

 昨年4月比で約100便を減らす弘南バス(本社・弘前市)。利用者の少ない路線や時間帯を対象にダイヤを調整したが、同市内を運行する桜ケ丘線や石渡線などは、通勤客らの需要がある朝の時間帯を減便せざるを得なかった。

 同社の松山泰芳宏・乗合バス課長は「できる限り減らしたくない思いはあったが、運転手が年々減っていて泣く泣く決断した」ともどかしい思いを口にする。

 八戸市交通部は市営バスについて、八戸駅と中心市街地を結ぶ路線の運行間隔を10分から15分に延ばすなどのダイヤ改正を行い、平日は14便、土曜と日曜祝日は各11便減らす。「比較的本数が多い路線や、前後に代わりの便があるところなどを対象とし、利用者に影響が出ないように考えた」(同交通部)という。

 八戸市や三戸郡などで南部バスを運行する岩手県北自動車南部支社(八戸市)は具体的な本数を明かしていないが、路線を全体的に減便。八戸圏域に導入した交通系ICカード「ハチカ」の利用データを分析して運行本数を見直した。

 十和田観光電鉄(本社・十和田市)は、鉄道代替バスの「十和田三沢線」や三沢市とおいらせ町を結ぶ「三沢-百石線」、十和田市中心街と焼山地区をつなぐ「十和田線」など22便を減便する。佐藤行洋代表は「人口の少ない地域の路線だけでなく、十和田市-八戸市間など人口が多い地域や中心街を通る路線も乗客の少ない時間帯を吟味して減らした」と説明する。

 一方、青森市は4月からの夏ダイヤで市営バスの減便や路線縮小は行わない。利用者が多い冬ダイヤに合わせて運転手数を確保しているため、夏ダイヤは人員に余裕があり、労働時間の上限規制に対応できたという。24年度も冬ダイヤ(12月~25年3月)に向け、新規採用する予定だ。

 下北交通(本社・むつ市)も23年度に東通村を主に走る4路線を廃止しており、減便、路線縮小は実施しないという。

▼待遇改善や免許取得費助成 人材確保へ知恵絞る

 県内のバス事業者らは慢性的な運転手不足と時間外労働の規制強化を受け、減便や路線縮小に踏み切ったが「人手不足が完全に解消されたわけではない」と口をそろえる。運転手の高齢化から今後も退職者の補充を行う必要があり、各社は待遇の改善や大型2種免許取得費用の助成など人材確保に知恵を絞っている。

 八戸市交通部は、46歳未満の大型2種免許の未取得者を対象に免許取得費を上限30万円で助成しているが、2024年度から対象を56歳未満、上限を50万円に引き上げる。

 岩手県北自動車南部支社は17年から運転士の年収を引き上げ、23年度は16年度比で2割以上アップさせた。

 十和田観光電鉄は給与などの待遇改善を行ってきた。新規採用の問い合わせや応募は2、3年前と比較して増えているという。

 弘南バスは免許取得費用の助成制度のほか、女性ドライバーが育児をしながら働けるよう勤務ダイヤを調整するなどしている。

 各社ともさまざまな採用策を打ち出しているが、必要な人数を充足するには至っていない。県バス協会が昨年行った調査によると、人手の確保状況を未定とした青森市営バスを除く5社の運転手数は24年4月時点で、1社当たり15.4人不足する見通しだ。

 人口減少などで大型2種免許の保有者数が減少していることや、県内事業者は不規則な勤務や仕事内容に見合った給与を支給できていないことが要因とみられる。人材確保には待遇改善が必要で「将来的な運賃の賃上げを検討している」との声もある。

 県バス協会の池田守専務は「各社が賃上げなどに取り組んできたが、すぐに運転手が集まるわけではない。来年度以降も減便や路線見直しを考えていかなければならないだろう」と語る。

 ◇

バス業界の2024年問題 働き方改革関連法に基づき、4月1日からバス運転手の時間外労働(残業)の上限を年間960時間に制限することで生じる問題。1日の拘束時間の上限をこれまでの16時間から15時間に減らし、勤務終了から始業までの休息を従来の8時間以上から原則11時間以上(最低9時間)に長くする新ルールも同時に導入される。夜間の便を運転した場合、翌朝から出勤できなくなるケースが出てくる。現行ダイヤの維持にはより多くの運転手が必要となり、人手不足に拍車がかかるとされている。

© 株式会社東奥日報社