希少疾患は世界の課題、国境越えた協力を ボアオ・フォーラム

希少疾患は世界の課題、国境越えた協力を ボアオ・フォーラム

28日、「希少疾患と健康の公平性」をテーマにしたサブフォーラムで、ビデオメッセージを通じてあいさつする、京東集団(JDドットコム)元副総裁の蔡磊(さい・らい)氏。現在は医療機器を手がける愛思康医療科技の董事長を務める。(ボアオ=新華社記者/楊冠宇)

 【新華社ボアオ3月31日】中国海南省瓊海(けいかい)市博鰲(ボアオ)鎮で29日まで4日間開かれたボアオ・アジアフォーラム年次総会で、「希少疾病と健康の公平性」をテーマにしたサブフォーラムが28日にあった。出席者らは患者の権利が保障されるよう支援する取り組みなどについて意見を交わした。

 世界保健機関(WHO)は、患者数が総人口の0.065%から0.1%の疾病または病変を希少疾患と定義している。世界には数千種の希少疾患が存在し、患者数は約3億人に上る。

 フォーラム開催地に近い医療特区「楽城国際医療観光先行区」で21日、スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子変異による筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬が発売された。ALSは全身の筋肉が徐々に動かなくなる病気。中国のALS患者は、海外に行かなくても薬が手に入るようになった。

 中国で唯一の医療特区である同先行区はここ数年、「特許政策」を通じて希少疾患治療の特許医薬品を40種類以上導入し、多くの患者に新たな治療の選択肢を提供してきた。希少疾患に対応する「中国プラン」は世界中から注目されている。

希少疾患は世界の課題、国境越えた協力を ボアオ・フォーラム

28日、サブフォーラムであいさつする中国国際経済交流センターの畢井泉(ひつ・せいせん)理事長。(ボアオ=新華社記者/楊冠宇)

 中国では希少疾患をリストで管理し、80種類以上の薬を医療保険の対象としている。肝臓の腫れや貧血などの症状が出るゴーシェ病や全身の筋力が低下する重症筋無力症など、長い間有効な解決が得られていない病気も収載。2千万人を超える希少疾患患者に希望をもたらしている。

 全身の細い血管に多数の血栓が形成され、臓器の機能障害を引き起こす非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)の治療薬も1月1日に医療保険の適用対象になった。従来は2万元(1元=約21円)以上だった薬が医療保険による還付を受けると千元ほどになる。患者や家族にとって新たな希望となった。

 中国国家薬品監督管理局の秦暁岺(しん・ぎょうれい)科技・国際合作司長は医薬品の審査と承認について、中国は臨床的価値のある革新的な希少疾患用医薬品を優先的に市場に投入できるようにしていると語った。

 希少疾患は世界共通の課題であり、共通の責任でもある。国境を越えた協力の強化を必要としている。

希少疾患は世界の課題、国境越えた協力を ボアオ・フォーラム

28日、ボアオ・アジアフォーラム2024年年次総会で、「希少疾患と健康の公平性」をテーマに開かれたサブフォーラム。(ボアオ=新華社記者/楊冠宇)

 中国希少疾患連盟の李林康(り・りんこう)執行理事長は「人類は誰もが希少疾患の診療技術や医薬品に手が届くよう国際協力を進め、医療の成果を共有すべきだ」と指摘。治療薬がないことが希少疾患の深刻な問題だが、企業は患者数が少なく開発コストがかさむため、新薬の開発には消極的になっている。

 英製薬大手アストラゼネカのパスカル・ソリオ最高経営責任者(CEO)は「希少疾患の研究は、がんや糖尿病ほど魅力的ではない」と指摘。企業は千人しか必要としないと思われる新薬の開発に10億ドル(1ドル=約151円)も費やさないと述べ、政府が基金を創設して研究開発や治療にかかる費用の削減を図るべきだとの考えを示した。

 希少疾患領域患者組織のグローバルネットワーク「RDI」のダーハン・ウォン・リーガー氏は「希少疾病患者の半数以上に遺伝的素因がある。早期のスクリーニングや診断、治療により、家族も社会も多くの費用と苦痛を軽減できる」と指摘。医薬品の調達についても、各国が「国際共同購入」を行うことで、診断や治療にかかる費用を削減できるかもしれないと語った。(記者/柳昌林、陳凱姿)

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