壱岐市長選の直前情勢 4新人、勝負の行方は「混沌」 争点なく…農業票が鍵 長崎

 任期満了に伴う長崎県壱岐市長選の告示(4月7日)が1週間後に迫った。4期目の現職、白川博一氏(73)が引退を表明し、新人4人が争う見通し。目立った争点はないが、16年ぶりに交代する市政トップがどのように人口減少克服や経済振興を図るのかが問われる。その前哨戦をリポートする。
 立候補を予定しているのは表明順に▽元市職員、篠原一生氏(46)▽同、出口威智郎氏(48)▽元衆院議員秘書、坂本和久氏(59)▽元市議、森俊介氏(39)。いずれも無所属で、政党の推薦を受けずに挑む。
 篠原氏は交流サイト(SNS)を多用し、無党派層にも訴える活動を展開。親交がある田上富久前長崎市長が応援に入る予定。
 出口氏は後援会長に保守系の元壱岐市議会議長を迎えて態勢を構築。SNSに加え、島内を地道に回る戦略を重視する。
 篠原、出口両氏は同期入庁で市政を支えてきた「エース」格とそろって評される。市商工会は両氏の推薦を決めた。
 一方、坂本氏は前々回、森氏は前回の市長選で白川氏に敗北。それだけに両氏とも市政の問題点を指摘する場面が目立つ。
 坂本氏は島中心部の住民や有力漁協などの推薦を得た。秘書時代に培った島外の国会議員とのパイプもアピールする。
 森氏は前回、白川氏に329票差まで肉薄した。翌年の市議選は1737票を獲得してトップ当選し、議員経験を強みとしている。
 引退する白川氏は「後継指名はしない」と断言したが、周囲は「元部下(篠原、出口両氏)への信頼は厚い。応援したい気持ちはあるはず」。ただ、地縁や血縁が濃密な島独特の人間関係に配慮してか、特定の陣営を肩入れする動きは見せない。
 同時に実施される市議補選(被選挙数2)には6人が出馬する見通しだが、市長選立候補予定者が共闘する様子はうかがえない。
 合併旧4町のうち、篠原、出口、森3氏は人口が最も多い郷ノ浦町に事務所や自宅を構える。坂本氏は芦辺町が拠点。「票の行方は混沌(こんとん)としている」とある陣営関係者。残る勝本、石田両町での浸透や、旗色を鮮明にしていない農業関係者の取り込みが情勢に影響するとみられる。
 隣の対馬市は3月の市長選で高レベル放射性廃棄物(核のごみ)最終処分場誘致の賛否が争点となった。壱岐市にはこうした民意を分断するような案件はない。島の新たなリーダー候補として、有権者に響く具体的な将来像や地域活性化策を示せるかが勝負の流れを左右しそうだ。

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