「夜うまく眠りにつけない」「夜中に何度も目が覚めてしまう」「眠りが浅い気がする」そんな睡眠への悩みを抱えている中高年男性の方は意外と多いのではないでしょうか? 実はこのような睡眠障害は、男性更年期障害が原因の可能性があります。睡眠障害と男性更年期障害の関係、そして対策について、日本初の男性更年期障害クリニック「オトコノクリニック」を開院した中村有吾院長が解説します。
「睡眠障害」と「更年期障害」との関連性
男性更年期障害(Andropause)と睡眠障害の関連性については、研究の進行中であり、明確な関係がまだ完全に理解されているわけではありません。しかし、男性更年期障害と睡眠障害の両方が、男性の中高年期に頻繁に発生することが報告されています。
以下は、男性更年期障害と睡眠障害の関連性について考えられるいくつかの要因です。
ホルモン変化
男性更年期障害は、男性のテストステロンレベルの低下に関連しています。このホルモンの変化は、睡眠サイクルや睡眠パターンに影響を与える可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群(SDB)
テストステロンの低下は、睡眠時無呼吸症候群の発症リスクを高めることが示唆されています。SDBは睡眠障害の一形態であり、睡眠中に一時的に呼吸が止まることで睡眠の質が低下する問題です。
ストレスと心理的要因
男性更年期障害は、身体的な変化だけでなく、心理的な変化も伴うことがあります。これにはストレス、不安、うつ病などが含まれます。これらの心理的な要因は、睡眠障害のリスクを増加させる可能性があります。
生活スタイルの変化
更年期障害に伴い、男性は生活スタイルの変化を経験することがあります。これには運動量の減少、食事の変化、ストレスの増加などが含まれます。これらの変化は、睡眠の質やパターンに影響を与える可能性があります。
睡眠障害がもたらす日常生活への影響
男性更年期の睡眠障害がもたらす日常生活への影響は、個々の症状や重症度によって異なりますが、一般的な影響には以下のようなものがあります。
日中の眠気や疲労
睡眠障害によって十分な睡眠が取れないため、日中に眠気や疲労が生じやすくなります。これは仕事や日常生活の活動に集中しにくくなる原因となります。
認知機能の低下
睡眠不足や質の低い睡眠は、認知機能に悪影響を与える可能性があります。注意力の低下、判断力の鈍化、記憶力の減退などが現れることがあります。
情緒不安定さやストレスの増加
睡眠障害は、感情のコントロールを難しくし、ストレスや不安感を増加させる可能性があります。これにより、日常生活でのストレスへの対処が難しくなることがあります。
パフォーマンスの低下
睡眠障害によって、仕事や社会活動でのパフォーマンスが低下する可能性があります。集中力や創造性が低下し、業務の効率や成果に影響を与えることがあります。
身体的健康の悪化
睡眠障害は、心血管疾患、肥満、糖尿病などの健康問題と関連しています。これらの疾患が進行すると、日常生活の質が低下する可能性があります。
人間関係の影響
睡眠不足や睡眠障害は、人間関係にも影響を与える可能性があります。イライラや気分の不安定さが関係を悪化させることがあります。
これらの影響は、男性更年期の睡眠障害が個々の人々におよぼす可能性のある影響の一部です。睡眠障害に悩んでいる場合は、適切な治療やライフスタイルの変更を行い、日常生活への影響を軽減する努力が重要です。
男性更年期障害による睡眠障害を改善するには
男性更年期の睡眠障害に対する対処法は、生活習慣の改善、食事と栄養の改善、そしてホルモンバランスの調整に焦点を当てることが一般的です。
生活習慣の改善
・規則正しい睡眠スケジュール:毎日同じ時間に寝ることや起きることで、体内時計を整えます。
・快適な睡眠環境:寝室を暗く静かにし、快適な温度に保ちます。また、快適なマットレスや枕を使用して睡眠の質を向上させます。
・リラックスする習慣:寝る前にリラックスするための活動を行います。マインドフルネス、瞑想、軽いストレッチ、またはリラックスした音楽の聴取などが有効です。
・運動習慣:適度な運動を毎日行うことで、身体と心の健康を促進し、睡眠の質を向上させることができます。
食事と栄養の改善
・バランスの取れた食事:栄養バランスの取れた食事を摂取し、過剰なカフェインやアルコールの摂取を控えます。
・就寝前の食事制限:寝る前に大きな食事や刺激物を摂取しないようにします。軽い食事や健康的なスナックを選択しましょう。
・ハーブやサプリメント:睡眠を促進するためのハーブやサプリメント(例:メラトニン、ラベンダー、カモミール)を検討することができますが、事前に医師と相談することをお勧めします。
ホルモンバランスの調整
・医師への相談:男性更年期の症状が深刻であれば、医師に相談し、ホルモン療法などの治療オプションを検討します。
・ライフスタイルの変更:ホルモンバランスを調整するために、適切な睡眠、健康的な食事、運動を含む健康的なライフスタイルの習慣を採用します。
継続的な取り組みと日常的なケアが重要
男性更年期の睡眠障害に対処するためには継続的な取り組みと日常的なケアが非常に重要になります。睡眠障害は一時的な問題だけでなく、慢性化することもあります。そのため、定期的なケアと習慣の確立が必要です。
習慣の定着
上記の対処法を毎日実践し、習慣化することが重要です。規則正しい睡眠スケジュールを維持し、リラックスする習慣を定着させることで、身体が睡眠のリズムを調整しやすくなります。
継続的な健康管理
定期的に医師や専門家とコミュニケーションを取りながら、状況をモニタリングし、必要に応じて治療プランを調整します。睡眠障害の症状が改善されても、継続的なフォローアップが重要です。
自己ケアの継続
適切な食事、運動、ストレス管理などの健康的な生活習慣を継続することで、睡眠障害の再発や悪化を防ぎます。健康的な生活習慣は、身体と心のバランスを保ち、睡眠の質を改善するのに役立ちます。
継続的な自己評価
自己評価を継続的に行い、睡眠の質や日中の疲労感などの変化に注意を払います。問題が発生した場合は、早めに対処することが重要です。
男性更年期の睡眠障害は個々の状況によって異なるため、継続的な取り組みと日常的なケアが必要です。そのためには、自己管理能力を養い、適切な支援を受けながら、健康な睡眠環境を確保することが重要です。
中村 有吾
オトコノクリニック院長/なかむら産業医療コンサルティング事務所代表産業医