校歌に一番使われる言葉は? 長崎市立小67校の歌詞を分析 あふれていた地元色

長崎市立小67校の校歌をユーザーローカルの「AIテキストマイニング」で分析した結果。出現回数に限らず、特徴的な単語が強調されている。青は名詞、赤は動詞、緑は形容詞。ここでは出現回数が特に多い「われら」や校名などは除いた

 学校の数だけ校歌がある。全国各地で郷土愛や母校自慢が歌い継がれているが、ここ長崎の校歌は、やっぱり長崎らしい歌詞なのだろうか。長崎市立小学校全67校(分校を除く)の校歌を集めて分析してみると、長崎ならではのキーワードが浮かび上がった。
 分析にはユーザーローカル(東京)の文章解析ソフト「AIテキストマイニング」などを活用。67校分の校歌に頻出する単語や、特徴的な単語を抽出した。
 それによると、最も多い名詞は「われら」(70回)、動詞は「輝く」と「学ぶ」(各21回)、形容詞は「高い」(31回)だった。長崎特有の単語も。被爆地を思わせる「平和」(16回)や長崎港の別名「鶴の港」(8回)、市北部では身近な山の名「岩屋」(11回)がよく使われる。
 実際の歌詞を見ると、例えば心は「清き心」「心を磨き」などと使われ、平和は「鳩(はと)」「鐘」などとの組み合わせ。〈鶴の港をのぞむ丘〉〈鶴の港の船笛が海原遠く流れ行く〉など、港町らしい表現もあった。
 1回でも存在感が際立つのが飽浦小の「起重機」。校舎のそばにクレーンが並ぶ造船所がある。〈いささかも労を惜しまず 起重機の重きに耐うる心もて〉
 出現回数に限らず、67校の校歌に特徴的な単語も判明(画像参照)。児童の成長を願う「伸びゆく」「たくましい」、学校をたたえる「栄える」「ゆかしい」などが目立った。

長崎市立小67校の校歌 頻出単語ランキング

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 校歌の歴史などに詳しい小樽商科大の須田珠生准教授(学校文化史)に結果を見てもらった。第一印象は「川が少ない」。全国的に「山」と「川」は使われやすいというが、今回は中島川や浦上川などの9回で、40回余り出てくる「山」と比べても少ない。
 斜面地が多く、大きな川がない土地柄に由来している可能性がある。一方で須田氏は「丘」(33回)の多さに注目。丘の上の校舎から海を望む-という趣旨の歌詞はいくつもあり、須田氏は「坂が多く、海に近い地形の特徴が現れているのではないか」とみる。
 須田氏によると、校歌は明治期の1890年代ごろから歌われ、大正期になると地域の名所や自然を入れて「独自色」を出す校歌が増加。昭和期の1930年代には郷土教育運動の高まりとともに、地域住民も歌う「郷土の歌」となった。
 しかし戦後、小学校を中心に「時代にそぐわない」と作り直されたケースは多いという。今回確認できた範囲では、西坂小の校歌が1929(昭和4)年制作と古い。歌詞は〈朝夕に 丘の上なる学舎に坂路をたどる 我らの歩み〉〈見下ろせば 鶴の港の潮路は南にひらけ 我らの望み〉などと、長崎らしさ満載。時代を超える普遍的な歌詞として生き残ってきた。
 少子化に伴う学校の統廃合が進む現代。新しい校歌も生まれているが、古い校歌の扱いは学校や自治体によってまちまちだ。全国には、岡山県立図書館のように音源や資料をデータベース化して保存する自治体もあり、須田氏は「校歌が忘れられる前に『残す』取り組みが広まってほしい」と話す。

◎校歌の分析方法

 長崎市立小67校の校歌は、各校ウェブサイトで公開されている歌詞のほか、未公開分は市教委所有の学校要覧から抜粋したり、個別に提供を受けたりして収集。データ化した歌詞を解析ソフトに入力する際は「我ら→われら」「かがやく→輝く」などと表記を統一。校名や「小学校」などは除いた。

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