中国の水産禁輸から7カ月 長崎県産の養殖マグロ「辛抱の時期」 国内流通切り替えも…相場は低下

水揚げされる養殖マグロ。中国に輸出できなくなって7カ月が過ぎた=県内(県まぐろ養殖協議会提供)

 東京電力福島第1原発の処理水海洋放出を理由に中国当局が日本からの水産物輸入を全面停止してから7カ月が経過したが、今なお解禁への道筋は見通せない。長崎県は、日本一の生産量を誇る養殖マグロを中心に中国輸出を拡大していただけに、痛手は小さくない。多くの事業者が国内流通に切り替えたが、相場の低下に苦しんでいる。
 「今は辛抱する時期。経費削減や販路開拓で生き延びるしかない」。県まぐろ養殖協議会の小川広之会長がため息をつく。
 県によると、本県水産物の海外輸出額は右肩上がりで推移し、2022年度は71億円。このうち3~4割を中国向けが占め、23年上半期(1~6月)も前年同期を上回っていた。主力の養殖マグロの業者はここ数年、高価で取引される中国向けにサイズの拡大や増量を図り、県もまだ販路がない中国内陸部での商談会を計画していた。その矢先の昨年8月24日、禁輸が始まった。
 業者は供給先を切り替えざるを得ず、国内流通量が増えてだぶつく事態に。その結果、輸出していない養殖業者も間接的にあおりを受けている。ある県内業者は「需要とのバランスが崩れ、国内相場が今年に入って2割ほど下がった」と嘆く。本県産を多く扱う福岡魚市場(福岡市)も「23年上半期は中国への輸出増に伴い相場が上がっていたが、元に戻った。ただ、イワシやサバといった餌代が高騰している分、生産者は収益低下に困っている」と代弁する。
 こうした中国の禁輸や国内の物価高騰を受け、県は国の交付金を使った緊急対策事業として3月上旬、東京各地で県産養殖マグロのフェアを開催。50カ所以上の量販店で計1億4500万円分を売り上げた。
 県産で22年度の海外輸出額が最も多かったのは養殖ブリ。県の緊急対策事業は7500万円分を購入し学校給食に提供した。長崎税関によると、最近は韓国向け輸出が好調。ある県内業者も5年前から韓国にブリを供給し、米国にも販路を広げているが、中国向け養殖マグロはストップ。「やはり、大きい中国市場の再開が待ち遠しい」としている。

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