【インタビュー】メジャーデビュー曲も鮮烈なあいみょん、“生と死”を歌う理由を明かす

シンガーソングライター・あいみょんが、来たる11月30日(水)にシングル「生きていたんだよな」をリリースしメジャーデビューを果たす。きゃりーぱみゅぱみゅ、高橋優、神聖かまってちゃん、RIP SLYME etc…と、とりわけ独自の活動を展開するアーティストだけが所属するワーナーミュージック・ジャパン内のレーベル“unBORDE”からのデビューというトピックからも、彼女の注目度の高さと実力が伝わるだろう。しかも同レーベル内で、あいみょんは現在唯一の女性シンガーソングライターとなるのだ。

当時19歳であった2015年3月のインディーデビュー時から「生と死」というものに対峙してきたあいみょんであるが、飛び降り自殺のニュースをもとにした楽曲「生きていたんだよな」は、まさに「生と死」を歌うナンバーであり、独自の鮮烈な世界観を真正面から提示している。2014年末に新人女性アーティスト特集(https://www.barks.jp/news/?id=1000111242)で取り上げさせてもらってから、BARKSでは幾度もインタビューをしているあいみょんに、あらためて「なぜ、生死に興味があるのか?」という問いをぶつけるとともに、メジャーデビューというタイミングに寄せる率直な想いを訊いた。

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■ シンガーソングライターの女の子のデビュー曲って
■ カルピスのCMに使われるような曲調が多いですけど(笑)

── まずは、メジャーデビューおめでとうございます。インディーデビュー前からあいみょんを応援してきたBARKSとしては感慨深いというか、とても嬉しいです。

あいみょん:私もとても嬉しいです。ありがとうございます。

── そして、メジャーデビュー曲がこの「生きていたんだよな」だということにも感激しました。もっと人を選ばないマイルドな楽曲で、という選択肢もあり得たと思いますが、非常にあいみょんらしいストレートな楽曲ですね。

あいみょん:実は同じように語りから入る構成でもう1曲作っていたんです。そっちは割りと普通のラブソングみたいな曲なんですけど、unBORDEのスタッフの方に先にできた1曲を送ってみたら、「これだよ!」って言われてびっくりでした(笑)。「本当にこれでいいんですか?」って聞いたりもしたんですけど、今となってはこの曲でよかったと思ってます。この曲を選ぶスタッフさんに、強みを感じました。

── これからも伸び伸びと制作できそうですね(笑)。

あいみょん:言っても、私もシンガーソングライターの女の子なので、シンガーソングライターのデビュー曲ってカルピスのCMに使われるような曲調が多いですし(笑)。任せられるなって思いました。

── ご本人に訊くのもなんですが、unBORDEのアーティストに選ばれた理由ってなんだと思いますか?

あいみょん:えぇ……わからないです(苦笑)。でも、純粋にめっちゃ嬉しかったですね。偶然にも私、unBORDEに所属してるアーティストの曲をすごく聴いてきたんですよ。リップさん(RIP SLYME)も好きですし、学生時代は神聖かまってちゃんが大好き過ぎて、の子さんの写真の撮り方をマネたくらい。「ロックンロールは鳴り止まないっ」を初めて聴いた時に感動して泣いたんですよ。最近はアカシックさんも凄く好きで。それに、unBORDEは他に女性のシンガーソングライターがいないということも嬉しかったです。デビューを控えている女性のシンガーソングライターって、世の中にはいっぱいいると思うんですよね。

── あいみょんがunBORDEに所属するって聞いて凄くしっくり来ました。

あいみょん:でもメジャーデビューする実感は、昨日くらいからやっと湧いてきたんですよ(笑)。昨日していただいた取材では「まだ実感ないです。実際デビューするまでわかんないですね」とかって答えていたんですけど、“メジャーデビュー”っていう言葉が会話に出てきたことでようやく実感が湧き始めてきた感じです。最近はデモ盤を貰う機会も増えたので、部屋とかに置いてあると、「わ、なんかアーティスト感ある!」とか思うんですけど(笑)。

── わかる気がします(笑)。「生きていたんだよな」は、友達だったり誰かの代弁をしているというわけではなく、あくまでもあいみょんが感じたことを表現した曲ですよね?

あいみょん:そうですね。2016年1月、西宮の実家を出る前に作った最後の曲なんですけど、テレビを観ていて、年明け早々凄く悲しい事件だなと感じました。頭のなかにずっとこのニュースが残っていたので、自然とそれが曲になったというのが流れです。

── 生と死というものをオブラートに包まずストレートに表現していますが、それはあえてだったんですか?

あいみょん:そういうわけではないんですが、変な話、インディーデビューのシングル(「貴方解剖純愛歌 〜死ね〜」/2015年3月)でいわゆるNGワードとかは学んではいるんですよね……(笑)。

── そうですよね。サビで“死ね〜”と歌うこの曲は、オンエアNGを食らいました。だからこそ普通は以降、使うべき言葉/そうじゃない言葉を気にしてある程度遠慮すると思うんですよ。

あいみょん:いや、気にしてないですね。あの時も気にしてなくて(笑)、「そういうものなんだなぁ」って学んだだけというか。今回の曲に関しては、“自殺”っていうワードが具体的に入ってるので、それ以上、“死ぬ”とか“死”っていう言葉は使わないほうがいいなっていうことは思っていたんですけど、これはダメっていうNGは構えずに書きました。

── この曲は、気付きみたいなものを与えてくれる曲だと思っています。

あいみょん:私もまったくネガティブな曲ではないと思っています。人それぞれ色んな生き方があるからこそ、こういう道を選ぶ人もいる。精一杯生きる方法っていうのはそれぞれなので、曲で描いた子はこういう道だったんだと思っていて。もう一方で、年始早々目にしたのでもちろんショックは受けました。この曲は、死を選んだ人、それを目撃した野次馬、そのニュースをテレビで観た人、どの当事者も第一人称には置いてないんです。

── 聴く人によって反応はいろいろでしょうね。

あいみょん:反応が凄く楽しみです。私と同世代のファンのかたが多いので、そういう子達からは「生死について考えさせられました」っていうリアクションをいただきつつありますね。

── 改めて、どうして「生死」について書いた曲が多いんだと自己分析しますか?

あいみょん:……人は必ず死ぬ、ということがやっぱり不思議なんですよね。その中で、しぶとく生きてやろうっていう考えの人とかいろいろな考えの人がいる。それに私、事件とかにも普段から敏感に反応するたちで、世の中には命を奪う人もいて。でもその一方で、お医者さんとかは命を助けるわけですよね……だから、生死の問題というより、「人間ってなんなんやろう?」っていうことだと思います。そういうことを考え出すともう止まらないんですよ。

── そうなんだ。

あいみょん:18歳の時に作った「19歳になりたくない」っていう歌にも“自殺”っていうワードは出てくるんです。この歌を作った時は、自殺をするって凄いな、自殺する勇気を他の何かに使えるんじゃないかって、ちょっとひねくれた精神だったんですけど、ハタチを過ぎてからは、そういう生き方もあるんやろうなって思うようになりました。歳を重ねるごとに考え方が凄く変わってきてるので、「生死」とか「人間」について考えていると毎回止まらなくなるんです。だから、「生きていたんだよな」は今やから生まれた曲やと思います。

■ もしかしたら自分には、音楽をやることができるのかもしれないと思い始めている

── この曲は、語りから始まって突然メロディが入ってくるという構成も見事です。ゾクッとしてまず耳が持っていかれるし、頭の中を駆け巡る感情がメロディによって放たれていく感じが歌詞とぴったり。3分15秒程の尺とは思えない情報量ですよね。

あいみょん:ストックがいくつかある中で、でもリアルタイムの曲を作りたかったのでこの構成は今までやったことがない手法なんです。だから、作った当初は恐る恐るでした。自分の楽曲に対して自画自賛するタイプなので、もちろん自信はあるんですけど、でも不安もあって。やっぱり、メジャーデビュー曲っていうからにはいいもの作らなきゃって気合いがありました。

── あいみょんなりの歌謡曲が生まれたと思います。ご自身のルーツも歌謡曲にあって、実際に今まで作ってきたメロディも歌謡的で、言葉使いも結構渋めだったりする。でも、歌謡曲ってやっぱり時代が投影されることが大事だと思うし、この曲ではネットでのやり取りが描かれていたり今の時代ならではの曲ですよね。そして、カップリングの2曲は曲調がガラッと変わります。

あいみょん:はい、ガラッと(笑)。

── 歌詞はあいみょんさんのルーツを表現したような曲ですよね。明るい曲調の「今日の芸術」は、岡本太郎のことを歌った歌。「君がいない夜を越えられやしない」は、甘酸っぱい青春ソングで、尾崎豊も彷彿とさせるフォークソングですね。

あいみょん:私、インディーズのデビュー曲もあんなんだったので、いまだに怖がられている部分もあるみたいで(笑)。そういう方の気持ちもわかるんですけど、今回のシングルはバラエティー豊かな3曲なので、いろんな曲調を聴いてもらいたいですね。

── うんうん。

あいみょん:絶対、殺人鬼やと思われてると思いますよ(笑)。だからTwitterとかは明るめにしてるんです。言ってもやっぱり関西人なんで、オモロイこと言ったろとか思っちゃうんで。怖がらず気軽に話しかけて欲しいです。

── そうですね、ぜひ(笑)。あいみょんは以前、写真を撮ることや絵を描くことも好きだから、音楽で食べていくことは“あわよくばくらい”なんです、っておっしゃってて。でも、こうして確実にステップを踏んでいっているわけです。今はどのくらい音楽の道で生きていく決意をしていますか?

あいみょん:“これからだ”っていう意識なので、まだまだ不安はありますね。「生きていたんだよな」がバズれば“いける!”って確信できるかもしれないんですけど……でも、あわよくばの精神でもここまで来ているので、もしかしたら自分には音楽をやることができるのかもしれないって思い始めているというか。曲を作ることは本当に好きなので、もしいずれ自分が歌わなくなっても、作詞作曲は死ぬまでやってるのかなとは思います。

── そうあって欲しいです。歌詞は賛否両論あるものですけど、これだけメロディがポップだから歌として人にとても伝わる。だって私、「生きていたんだよな」も自然に鼻歌で歌っちゃいますから。こういう作曲の才能って誰にでもあるものではないと思います。

あいみょん:ありがとうございます。リスナーの方からも、“歌ってます”っていう声をいただくこともあって、凄く嬉しいですね。

── でもご自分の中では、メロディとか曲のよさって実はそんなに自覚されてないですよね? 文章を書くのが好きっておっしゃってるし、学生の時に作文が評価されて中国に派遣されそうになったっていうエピソードもあるくらいで。

あいみょん:そうなんです。歌詞には自信あるんですけど、曲にはそこまで自信ないので、そう言っていただけると嬉しいです。

── 今は、何が音楽を作るモチベーションになっていますか? こないだのインタビューでは、デビューしたら高校時代に自分のことを変人扱いした人と街で会っても無視することがモチベーション、っておっしゃってましたけど。

──はははは、性格悪いですけどマジでそう思ってました(笑)。今も見返したいという気持ちはなくなってはいないです。学生の時は、勉強大嫌いで成績が悪かったので、ホンマに見下されてたんですよ。ハタチの同窓会の時も、ある先生から「今何やってるの?」って訊かれて、その時はもう事務所さんと関わりがあったので「音楽やってます」って言ったら、「お前にそんなことできたんや」って言われたんですよ!? めっちゃムカついたから集合写真入らなかったですもん。だから、テレビとかラジオで今回のデビュー曲が流れてきてびっくりしたらいいのにって思ってます。

── タフな精神状態を維持してますね(笑)。少し大げさな言い方ですけど、これからあいみょんがどう社会を切り取っていくのかが凄く楽しみなんです。

あいみょん:どんな曲が生まれるんやろう?って自分でも楽しみですね。

── 「生きていたんだよな」のような社会的な歌もぜひ書いていってほしい。

あいみょん:私、こういう曲は書きやすいんですよね。私も社会にいるわけで、最近は特に人と出会う機会も多いし、思うことは多いですね。毎日ニュースも見てます。最近怖いニュースばっかりですよね……。

──でも、そこまで世の中の事件に関心がある21歳って多いんですかね。TwitterやFacebookのタイムライン上のこととか、あとは学校内での出来事とかにはすごく関心がありそうだけど、たとえば、自殺した人は本当にネガティブなだけなのかな?って考える人は珍しい気がします。

あいみょん:そうですかね。逆に私はめっちゃ考えるんで、なんでみんな考えないんだろうって思います。政治のニュースも気になりますし。同じような事件が立て続けに起きると、次は警察はどう対応するのかな?とか思うんです。あとは、また警察の隠蔽か!とか。ニュース番組に出たいくらいニュースに興味あります。まぁたぶん、話題についていけないのがイヤ過ぎるっていう個人的な性分もあるんですけど(笑)。

── ははは(笑)。いずれにせよ、これからも感じたことをどんどん曲にしてくださいね。

あいみょん:はい、ありがとうございます。がんばります!

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取材・文=堺 涼子

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