女性に求める理想年収は300万以上…という“理想”を上回った妻と夫の末路

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夫婦共働きが当たり前の時代ですが、妻が夫の収入を上回ることに不満を示す夫も少なくないのだとか。「恋人・夫婦仲相談所」の所長を務める三松真由美さんに解説してもらいました。

女性と男性ですれ違う「結婚相手に求める理想の年収」

独立行政法人 労働政策研究・研修機構の調査(※1)によれば、専業主婦世帯と共働き世帯の数が初めて逆転したのは1992年のこと。

その後、専業主婦家庭は次第に減少し、2023年には専業主婦世帯は29%、共働き世帯は71%となり、専業主婦世帯の比率は過去最低割合を更新しています。つまり、今の20代前半から下は「おかあさんが仕事をしているのが普通」という状況で育った世代と考えることができます。

実際、内閣府のおこなった「人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査」(※2)でも、「結婚後の働き方(理想)」という問いに対して

・20-39歳では、「夫婦ともに原則フルタイム勤務」が男女とも4割前後。
・40-69歳では、「夫婦ともに原則フルタイム勤務」が男女共に37%程度。

という結果が出ており、「結婚後も妻にフルタイム勤務をしてほしい」と考える男性はどの世代でも4割近くいます。一方で20-39歳の男性で妻に「専業主婦」を求める男性はわずか4.2%しかおらず、とくに「妻にもしっかり稼いでほしい」というのが、イマドキの40代未満の男性の考えと言えます。

その一方でWeCapital株式会社が20代~40代の未婚&既婚男女約1,000名に行った調査(※3)によれば、そんなイマドキの男性にもやや複雑な気持ちがあるようです。

「結婚相手に求める理想の年収はどのくらいですか?」と未婚の男女に質問した結果は、「400~500万円未満(23.7%)」が最多でした。しかしこの男女別の内訳を見ると、「女性が男性の結婚相手に求める理想年収は500万以上が最多」であったのに対して、「男性が女性に求める理想年収は300万以上が最多」と金額にギャップがあることがわかりました。

妻にも働いてもらいたいけど、そんなに多くは望まない…そこには男性のどんな気持ちが潜んでいるのでしょうか?

※1 https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0212.html
※2 https://www.gender.go.jp/kaigi/kento/Marriage-Family/8th/pdf/4.pdf
※3 https://we-capital.co.jp/archives/news/0301-2024

出世を報告する妻への不機嫌な対応、原因は家事の分担?

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マリナさん(38歳/仮名)は小学生5年生の1人娘をもつ働くママ。女性の就業継続に理解のある中堅企業で産休・育休を駆使しながら、結婚前の仕事を継続してきた営業ウーマンです。

来年度、事業部長から営業課の課長になることを打診され、同社で初となる女性の営業系課長になることを決心しました。今まで育児にも仕事の継続にも協力的だった夫にこの報告をしたところ、意外な反応があったと言います。

「夫の第一声は『勝手に決める前に、僕に相談してほしかったな』でした。今まで私がどんなプロジェクトに挑戦した時も応援してくれていたのに、今回は微妙な反応。

そして出てきた言葉は『年収はいくらになるの?お金より、これから受験を迎える子どものことのほうが大事じゃない?』でした。確かに課長になることで働き方は多少変わりますが、今までと同じチームで仲間も事情をわかってくれています。子どもにかけられる時間がそんなに減るわけではありません。

その懸念がないことを伝えて素直に年収額を夫に知らせると、『へぇ、すごいね、僕より高額所得者になるんだ。でも、僕も残業が多いし、もうこれ以上家事分担は無理だからね』とまくし立ててきました。

ああ…この人は、妻が自分より稼ぐと、それに合わせて自分の家事分担が増えることが気に入らなかったのか!と、夫が微妙な顔をしていたのが腑に落ちました。でも、妻の昇進に対して『家事はこれ以上やらないよ』って、夫としてそれが一番言いたかった言葉?とかなり夫に失望しました」

自分の家庭は夫婦平等であり、その理由が「稼ぎの少ないほうが家事を多く負担してバランスをとっているからだ」という男性はよくいます。「自分が多く稼ぐ」という条件の下では問題なかったこの方針が、年収が逆転することで自分にとって「不利になる」という意識が出てきてしまったのがこの事例です。

ちょっと意地悪な言い方をすると、見せかけだけの「夫婦平等」という化けの皮がはがれてしまったのかもしれません。

プライドを傷つけられた夫がとった最悪の行動…

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キョウカさん(45歳/仮名)は夫婦共働きで夫とは同期入社で社内結婚。お子さんはいません。会社のルール上、結婚後は夫婦で同じ部署にはいられないので、キョウカさんのほうが営業部門から広報部門に異動しお仕事を続けていました。英語と中国語が堪能なキョウカさんは広報部でも高い評価を受け、昨年秋に女性としては初の広報部部長に昇格。

そんなキョウカさんも、昇進に伴う家庭内の崩壊危機を体験しているそうです。

「同期入社の夫は、もともと私をライバル視しているところがありました。実際にはライバルというよりも、『同期の男子ならともかく、女子には負けたくない』という、上から目線の言動だったと感じています。でも私は別に役職にはこだわらないので、彼の言動は軽くスルーしていました。

ところが、今回の人事異動で私が夫より先に部長になったのが、彼にとっては大変不満なようです。『イマドキは女性管理職を無理やり作らなきゃいけないから、どんな奴でもなれるんだな』と嫌味を言ったり、『お前が目立つせいで、俺は正当に評価されない』などと被害者モードを全開にしたり、いちいち絡んでくるのが本当に面倒くさいです。

先日、あまりにカチンときたので「男の嫉妬は見苦しいわよ」とビシっと言い返したところ、『どうせ上司に色目を使ったんだろ。いいな、女は』と暴言を吐いたので、『じゃあMさん(上司)に会ったら、あなたがそう言ってたって伝えておくわね』と言ってやりました。

男性の妬みは実は女性よりも激しいというのは、まさにその通りだと思います。会社の中で敵が増えることは想定内でしたが、まさか家庭内に最大の敵ができるとは想定外でした」

「年収」と同じく「肩書」も敏感なのが会社にどっぷりつかっているサラリーマンの悲しい性。とくに同じ会社で同期入社だと、まさにプライドがズタズタというところかもしれません。そして残念なことに、キョウカさんの夫が傷ついたプライドを癒すために選んだ手段は、若くて従順な部下の女子社員との不倫。わかりやすい行動に出ました。

不倫が発覚した夫の謝罪をいったんは受け入れて離婚を回避したキョウカさんでしたが、「2度目はもう許しませんから」と今は夫の行動を冷静に監視しているそうです。

肩書という「記号」に振り回されるのはナンセンスだが、本音と建前も大事…

「仕事」はその人の社会的な立場を形成するパーツの1つであり、人生のすべてではありません。ましてや、仕事の中身や成果ではなく、年収や肩書と言った「記号」に振り回されるのはナンセンス。しかしながら、働く妻としては、理不尽な夫のプライドにも配慮が必要な場面があるのも事実です。時代が移り変わろうが、そこの部分だけは昭和妻を見習うほうが波風を立てません。

本音と建前、演技と実体をうまくコントロールしながら、賢く乗り切る必要があるかもしれません。そして、本当に必要なのはやはり”夫婦愛”ではないかとしみじみ思います。役割も年収も関係なく「妻を(夫を)尊敬してるし、大好き!」という気持ちひとつあれば、嫉妬も家事の押しつけも軽減まちがいなし。その気持ちを育むのが難しいのはわかりますが、そこで努力するところも含めて夫婦愛であると、筆者は考えます。

◆監修・執筆/三松 真由美
会員数1万3,000名を超えるコミュニティサイト「恋人・夫婦仲相談所」所長として、テレビ、ラジオ、新聞、Webなど多数のメディアに出演、執筆。夫婦仲の改善方法や、セックスレス問題などに関する情報を発信している。『堂々再婚』『モンスターワイフ』など著書多数。

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