「致死率30%の感染症」が、日本でも増えている…予防法は?【医師が解説】

「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」の感染者数が、日本国内でも過去最多となっています。致死率が高いことで知られる、この感染症の症状と死亡率、注意すべき点について、わかりやすく解説します。

Q. 「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」の症状と致死率を教えてください

Q. 「『劇症型溶血性レンサ球菌感染症』という病気が、日本国内でも増えていると聞きました。死亡率がとても高い、怖い病気だと聞いたのですが、実際にかかってしまった場合の致死率はどれくらいなのでしょうか? どうすれば予防できますか?」

A. 発症後の致死率は約30%。予防には、傷口の衛生管理と一般的な感染対策が有効です

「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」は、俗に「人食いバクテリア」「人食いバクテリア症」とも呼ばれる感染症です。 初期症状は、発熱などのただの風邪に似た症状や、手足の痛みや腫れなどですが、その後、急速に進行することが特徴です。多臓器不全を起こすことがあり、発症すると致死率は「約30%」といわれています。 日本国内での感染者数は毎年100~200人程でしたが、2023年には過去最高となる941人の感染者が報告されています。そして2024年は、3月21日時点で昨年同時期を大きく上回る517人が感染しています。 国内でも、感染者数の増加が懸念されている状況です。 劇症型溶血性レンサ球菌感染症を発症すると、10時間以内に、手足の筋肉や脂肪などの組織が破壊されてしまう「組織壊死(そしきえし)」、腎機能が低下する「急性腎不全」、肺に液体が溜まり肺機能が低下する「呼吸窮迫症候群」、血液内に血栓ができ、血小板や血液を固めるための凝固因子が減り、出血しやすくなってしまう「播種性血管内凝固症候群(DIC)」などの症状が起こります。 結果として、多くの臓器が機能低下または停止してしまう「多臓器不全」に陥り、命にかかわる状態になります。ここまで劇症化する詳しいメカニズムは、まだ解明していません。 初期症状の時点で気づくのは難しいかもしれませんが、進行がとても早いため、ただの風邪とは違うと感じたら早期に診断を受け、なるべく早く治療を開始することが大切です。 予防法としては、ケガをしてしまった場合は、菌が傷口から入って血流に乗らないよう、しっかりと傷口を清潔に保つことです。 また、飛沫感染や接触感染でうつるため、他の多くの感染症と同様に、手洗いやマスク着用などの感染対策が有効と考えられています。

清益 功浩プロフィール

小児科医・アレルギー専門医。京都大学医学部卒業後、日本赤十字社和歌山医療センター、京都医療センターなどを経て、大阪府済生会中津病院にて小児科診療に従事。論文発表・学会報告多数。診察室に留まらず多くの方に正確な医療情報を届けたいと、インターネットやテレビ、書籍などでも数多くの情報発信を行っている。 (文:清益 功浩(医師))

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