『涙の女王』キム・スヒョン&キム・ジウォンが涙のキス 和解の陰で暗躍する悪役たち

Netflixで大ヒット中の『涙の女王』が、韓国本国で自己最高視聴率の更新を続けている。本作は、キム・スヒョンとキム・ジウォンのW主演で大ヒットメーカーであるパク・ジウン作家が紡ぎ出すロマンティックコメディ作品だ。本稿では、第5話、第6話を中心にご紹介したい。(以下、ネタバレあり)

キム・ジウォンが演じるのは、財閥クイーンズグループの令嬢でデパートの社長であるホン・ヘインだ。ヘインは、美貌と才知に恵まれ、デパートの社長として経営手腕を見せている。財閥一族の中で、過去に兄を亡くしたことが原因となり母との折り合いが悪い。そんなヘインが愛して結婚したのが、キム・スヒョン演じる、地方のスーパーマーケットの息子であるペク・ヒョヌだ。ヒョヌは、弁護士としてやり手だが、優しい気質を持ち、ヘインに恋をし、彼女と結婚する。しかし、3年の月日が流れ、夫婦の仲はすっかり冷めきってしまい、ヒョヌは離婚を決意する。そんな矢先に、ヘインが余命3カ月と診断されたことから、夫婦は互いを見つめなおしていく……というのが、これまでの物語だ。ツンデレなヘインは、夫ヒョヌへの愛情がありながらも、素直に気持ちを表すことができない。それは、彼女の性格はもとより、過去に兄を亡くしたことによりできた自分自身への負い目と、罪悪感、そして母との関係性が関係しているのだろう。

一方のヒョヌは、心優しい男性で、精一杯の愛でヘインを守り愛しているのがわかる。しかし、そんなヒョヌの心を傷つけ愛を凍らせてしまった出来事があった。それは、ヒョヌとヘインの間に宿った愛の結晶である子供を亡くしたこと。ヘインが妊娠したことが分かり、ヘインとヒョヌは大喜びする。子供部屋を作り、天井に夜になると光る星のシールを貼り、誕生を待ち望むふたり。しかし、夫婦の間に子供はいない。亡くしたあとのふたりの悲しみの表現方法の違いが、夫婦を決裂へと追い込んでいく。涙を流し、悲しむヒョヌに対し、ヘインは子供部屋を撤去し、冷徹な様子を見せる。そんなヘインの姿に幻滅したヒョヌは、寝室を別にし、ヘインへの気持ちが無くなっていく。しかし、ヘインは、亡くした子のエコー写真も大事にしており、スマホの暗証番号は出産予定日なのだ。お腹に宿した子を思うヘインの気持ちを知っているのは、画面のこちら側の私たちだけなので、ヘインの心と、ヒョヌが星のシールを見て涙を流すのを見て一緒に泣いてしまう。夫婦に訪れた悲しい出来事が、本当は愛し合っている2人の気持ちがすれ違うきっかけになったという残酷さに涙が溢れてくる。

ヒョヌの実家にヘインがやって来たことで、ヒョヌの郷里は盛り上がっていた。ヘインの見せた心遣いと、彼女の弱った姿を見たヒョヌは、失くしたと思っていたヘインへの愛情が息を吹き返していく。そして、ヘインもまた、自分の病をきっかけに自分を心配して気遣うヒョヌの姿に、素直に愛を見せはじめる。ヘインがヒョヌの家に泊まることになり、あわやキス……! の寸前で、我に返ったヒョヌは、慌てて部屋から逃げ出してしまう。ひとり外で自分の気持ちに動揺するヒョヌ。ヒョヌの帰りを待つヘインは、ヒョヌを探しに出て、兄ヒョンテ(キム・ドヒョン)と飲むヒョヌを見つけ声をかけようとする。ヒョンテの「妻を独り寝させるのか」に対し、「ヘインが寝入った頃に帰ろうかと」というヒョヌの言葉を聞いたヘインは、ショックを受けて立ち去る。その後にヒョヌは、「なんかやらかしそう」と言うのだが、ヘインにもそこまで聞いてほしかったとヤキモキさせられる。

ヒョヌの気持ちを誤解したヘインは、治療のためにドイツへ単身旅立っていく。ヘインの病を偶然知ることになった、ヘインの叔母ホン・ボムジャ(キム・ジョンナン)から、ヘインのドイツ行きを知らされたヒョヌは、慌ててドイツに向かう。ヘインの元に向かうまでのヒョヌの心の移り変わりの演出が素晴らしい。

ヘインが海外に行くたびに、弁護士仲間で友人のキム・ヤンギ(ムン・テユ)と弾けていたヒョヌ。だが、いつものようにヤンギに軽口を言われても、心ここにあらずで、気持ちはドイツに行っているのだ。ヤンギにもそう指摘されるヒョヌ。ヒョヌは、ヘインのインタビュー動画を見るうちに、ヘインの自分への想いを知り、涙する。ヒョヌもヘインも、どちらも寂しいのだ。ヒョヌは、ヘインの心が自分への愛や、自分たちの子供への愛ではなく、デパートの売り上げを上げることだけに向いていると思い、自分が愛されていないと思い込んでいた。自分の存在は、ヘインの中では取るに足らないものだと。

ヘインもまた同じなのだ。ヘインの中では、兄を亡くしたことも、母親から憎まれるようになったことも、「自分のせい」なのだ。そして、ヒョヌとの間に授かった愛の結晶である我が子を亡くしたことも、おそらくヘインは「自分のせい」だと思っているのではないだろうか。そして、ヒョヌの心が自分から離れていくのも、「自分のせい」。そして、そんな状態から目を背けるために、必死でデパートの売り上げを上げることに邁進してきた。それしか自分の証明価値がないかのように。

ドイツで再会したヒョヌとヘインのシーンは素晴らしいものだった。ドイツの「心配のないという名の宮殿」にスローモーションで現れるキム・スヒョン。キム・スヒョン演じるヒョヌが、ハイヒールで足が痛むヘインのために、自分がプレゼントしたスニーカーを持って颯爽と現れる姿はまさにヒーローであり、ヘインと視聴者たちの王子様だ。結婚してからたくさん泣いたというヒョヌは、ヘインにむかって「こんな時は君のそばにいさせてくれ」と懇願する。ヘインは、涙ながらに「私はずっと、あなたにそばにいてほしいと思ってた。1人は嫌だったの」と心を明かす。ふたりは涙を流しながら、心の通った熱いキスをする。とても美しく、涙溢れる感動的なキスシーンだ。その後のドイツでのふたりの楽しい時間に心が和む。

しかし、ヒョヌとヘインの留守を狙って、M&Aの専門家で投資家のユン・ウンソン(パク・ソンフン)、義妹チョン・ダヘ(イ・ジュビン)、会長の愛人モ・スリ(イ・ミスク)、顧問グレイス・コ(キム・ジュリョン)ら悪役たちが活発に動き始めていた。クイーンズグループの中で、ヒョヌの発言力の強さを知ったウンソンは、ヒョヌを追い出すことを画策し、ヒョヌを罠にかけ陥れることにする。そうとは知らぬドイツのヘインとヒョヌだが、2人が帰りたがっていた「愛の巣」には、ヒョヌが以前作成した離婚合意書があり、一族を震撼させていた。

ヒョヌとヘイン夫婦の愛情を軸に、クイーンズグループを狙う悪役たちが蠢き出し、ミステリー要素がたっぷりと加わった本作。陰謀により窮地に立たされるヒョヌだが、この窮地をどう切り抜けるのか。脚本家パク・ジウンと制作陣が次はどんな一手を用意しているのか、次回がとても待ち遠しい。
(文=リアルサウンド編集部)

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