県道や国道はまだ約50区間で通行止め。倒壊した家屋のがれきや、傾いた電柱が残る通りも-。
能登半島地震の発生からきょうで3カ月たった。復興はいまだ途上にある。被災者が日常生活を取り戻すことに全力を注がなければならない。
一部の地域ではなお8千戸近くで断水が続き、食事やトイレにも事欠く状態だ。6月まで断水が続く可能性のある地域もあり見過ごせない。
石川県は3月末時点で地震による死者が、災害関連死15人を含めて244人と発表した。
ライフラインの長期停止は関連死の増加にもつながりかねない。国や自治体は断水の解消に全力を注いでほしい。
被災地ではまだ約4千人が避難所に残り、ホテルや旅館で暮らす2次避難者も約3千人いる。
住まいの確保はもちろんのこと、避難が長期化するほど避難所の環境整備も重要だ。どの場所においても被災者の命と健康を守る取り組みの継続が求められる。
先月初旬から仮設住宅の入居が始まったものの、元々住んでいた地域で入居できないという人も少なくない。高齢者にとっては孤立の要因にもなりかねず、地域のつながりを分断しない方策が必要だろう。
いまだに在宅避難者の把握が進んでいない所もある。
関連死の高リスク者や要支援者のニーズを聞き取り、医療や介護サービスなど日常のケアの再開を急いでほしい。
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高齢・過疎化が進む被災地では、復興やコミュニティーの再構築に携わる人手不足が顕著だ。
今月以降、全国の自治体から石川県庁や県内の市町などに少なくとも計360人の職員が中長期で派遣されるという。しかし、派遣数は当初の要望の7割超にとどまる。
東日本大震災で岩手、宮城、福島の3県には年に計2千人規模で入った時期があった。国は派遣元の負担軽減を図るなど調整してほしい。
復興を進めるには、仕事やなりわいの再建も不可欠だ。まずは輪島塗などの伝統産業、観光や漁業の本格的な再開へ、地元の意見を聞きながら前に進めたい。
そのためには県外へ広域避難した人たちの意向確認も重要だろう。避難が長引くほど戻ることは難しくなる。復興プロセスでは仕事のあっせんなど戻るきっかけづくりも必要だ。
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復興に向けた観光支援として国が始めた「北陸応援割」は、各旅館へ割り振られた予算枠が限られたために、補助が適用されなかった客のキャンセルが続出する課題が露呈した。
そもそも被害が大きかった地域は営業できる旅館がなく「支援」というには不十分である。
災害時に役立つとアピールしてきたマイナンバーカードも、読み取り機の不足などで避難所の運営に使えないなど、地震が頻発する国でありながら準備不足は明らかだ。
復興へ国の役割の抜本的な見直しも進めるべきだ。