小林製薬「紅麹」買収された元社長は「閉鎖的な一族経営が招いた “歪み”」を指摘…銭ゲバ体質の “成果” で会長宅はまるで城

問題となっている「紅麹コレステヘルプ」(時事通信)

長生きするために、お金をかけてせっせと飲んだサプリに命を奪われる――。

小林製薬が販売した「紅麹」成分入り食品による健康被害が続出している。

「同社の発表によると、3月30日時点で、遺族から連絡があった死者数は5人。紅麹サプリを摂取後に入院した人は114人、通院者と通院希望者は約680人に上ります。

同社は『紅麹コレステヘルプ』というサプリを販売していますが、これ以外にも紅麹の原料を173社に供給しており、混乱が広がっています。

厚生労働省は29日、小林製薬のサプリに『プベルル酸』という青カビ由来の化合物が意図せずに含まれていたと発表しましたが、この化合物がなぜ混入したのか、人体にどんな影響があるのかは、現時点で不明です」(社会部記者)

被害が広がった原因のひとつは、健康被害の公表が遅れたことだ。

「1月中旬から、サプリの利用者を診た医師から問い合わせが急増し、小林章浩社長は報告を受けた2月6日時点で、『回収になるかも』と考えていたそうです。にもかかわらず、ほぼ1カ月半も公表しませんでした」(同前)

なぜ、人命に関わる公表が遅れたのか。複数の関係者は同社の “キーマン” として、章浩社長の父、小林一雅会長の名前を挙げる。

「1919年に医薬品卸会社として創立された同社は、1970年代中ごろから衛生日用品・医薬品メーカーに転換。『サワデー』『熱さまシート』『のどぬ~るスプレー』など、インパクトの強い商品名でヒットを生みました。

また2000年代以降は、次々とM&Aをおこない新ブランドを “獲得” してきたことでも知られています。これらをすべて成功させてきたのが、一雅会長なんですよ。

ゴリゴリのワンマン経営者として知られ、現在でも社長の章浩氏はお飾りのようなもの。商品名も、そのほとんどを小林会長が考案していると聞いています」(取引先企業の関係者)

実際、同社に買収された企業の元社長は、こう証言する。

「私の時代は一雅会長がまだ社長でしたが、絶大な権力があったのは間違いないですよ。右腕の専務がいて、M&Aの交渉は、すべてその専務を通じておこないました。会長とはつき合いが持てなかったんです。

トップが強烈すぎて、ほかにいい社員が育っていなかった記憶がありますね……。逆に、今の章浩社長は52歳と若すぎて、古参幹部や会長にいろいろと気を使うこともあるでしょう。

やっぱり、一連の対応の遅さは、会長を頂点とする閉鎖的な一族経営が招いた “歪み” にあるんじゃないでしょうか」

さらに同社は、強烈な「“銭ゲバ体質” だ」と指摘する声もある。

「ほぼ同じ成分なのに、商品名と用途を変えて複数の商品を出している。悪いことではないのですが、がめつい “銭ゲバ感” はありますよね。商品のほとんどが日用品なので、どこまで製薬会社としての自負があったのかも疑わしい」(医療関係者)

取引先業者は、同社の工場にも疑惑の目を向けている。

「問題の紅麹は大阪工場で製造されていましたが、操業開始から80年以上もたっていて、改修、増設を繰り返していたため、工場ラインが複雑化していました。需要の増加に生産が追いつかない状態だったため、ほぼ休みなく生産ラインが稼働していたそうです。

細菌を扱うわけですから、本来は定期的に操業を停止し、消毒が必要になるはずですが、それがどこまで厳密にされていたのか、調べるべきですよ。“安全” をないがしろにしてでも利益を優先していたのか……」

小林製薬の一雅会長の自宅は、芦屋の高級住宅街六麓荘町の中でも、ひときわ異彩を放つ “城” だ。これも強烈な “銭ゲバ体質” の成果と言えるだろう。

一方、“紅麹問題” を機に、「健康サプリそのものの安全性を疑うべきだ」と警鐘を鳴らすのは、医療法人社団五良会理事長で、竹内内科小児科医院の院長、五藤良将医師だ。

「サプリの過剰摂取や薬との併用で、多くの健康被害が出ていることは、もっと知られるべきですよ。命に関わる多くの危険があるんです。

たとえば、ある20代女性が、急に血圧が高くなり、むくみと、手足の力が抜けるような症状があると来院されました。調べると2週間前から甘草茶を飲んでおり、そのせいで偽アルドステロン症になっているとわかりました。

すぐに飲むのをやめてもらったところ症状は回復しました。体の不調で病院に行く際は、服用中のサプリをすべて医師に伝えてください」

小林製薬につける薬はどこにあるやら。

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