腸活では腸内フローラを整える食べ物が大事というのは多くの人に知られるようになってきたところですが、もちろん食べ物以外の習慣も大事です。そこで本稿では、長年腸内細菌を研究し続けている医学博士の内藤裕二氏による著書『70歳からの腸活』(エクスナレッジ)から一部抜粋して、腸活のために大事な習慣をご紹介します。
食べものだけで腸内フローラは改善しない
腸内細菌はヒトが食べたものをエサにしていますから、腸内フローラを変えるには食べものがもっとも重要です。
しかし食べものだけでは腸内フローラは改善しません。食べもの以外でやはり大切なのは運動です。
1日30~60分程度の息が上がるようなやや強度の高い運動を週3回、これを6週間続けて行うと、肥満であるかやせているかに関係なく酪酸菌が増えるという報告があります。
なお、この効果は普通の体重や、やせている人でより顕著だったとされています。しかし運動をやめると、酪酸菌が減ることも示されています。
京丹後市の高齢者は、特別な運動はしていません。でも日常生活における活動量が都市生活者に比べるとはるかに多いのです。
彼らは朝早く起きて、畑に行ったり、海に行ったりして働いています。そうした生活が身体活動を高めています。別にジムに行かなくても、十分運動ができているわけです。
また運動をしても、たんぱく質を摂らないと筋肉は増えません。これはみなさんご存じですね。
京丹後市の高齢者のおもなたんぱく源は魚や大豆加工食品で、肉はほとんど食べません。
これが京丹後市の高齢者の腸内フローラの改善にも役立っています。赤肉に含まれる動物性脂肪は腸内フローラを悪化させるので、それが入ってこないことに加えて、運動(日常生活の活動)もしっかりしているので、いっそう腸内フローラがよくなるのです。
規則正しい生活は大事な腸活の1つ
京丹後市の高齢者は、朝早く起きて、夜は早く寝ます。このような規則正しい生活も腸内細菌を改善します。
約1日の周期を持つヒトの体内時計のリズムのことを概日リズムといいます。なぜ「概日」なのかというと、地球の24時間の周期と体内時計の周期には、約1時間ほどのズレ(ヒトの体内時計は約25時間)があるからです。
この概日リズムがあるため、ヒトは太陽が昇ると目が覚め、日中は活動的になり、夜になると眠くなります。
体内時計は脳にあるといわれていますが、腸にも体内時計が存在します。脳が中枢性の体内時計といわれるのに対し、腸は末梢性の体内時計と呼ばれています。
そして、腸の体内時計と脳の体内時計はシンクロナイズ(同調)しています。その理由はまだ十分解明されていませんが、腸に体内時計があり、それが脳の体内時計とシンクロナイズしていることは事実です。
さらに腸の体内時計は、腸内細菌の体内時計ともシンクロナイズしています。
それを明らかにした研究があります。
パイロットや客室乗務員など、国際線の飛行機の乗務員は時差ボケを起こしやすいことが知られていますが、この人たちの腸内細菌を調べると、腸内細菌の体内時計も狂っていることがわかりました。
三交代で働いている看護師さんには、体調を崩す人が多いといわれますが、同じようなことが起きている可能性があります。
といっても、夜勤の仕事は必要なので、腸内細菌のほうから体内時計の狂いを修正していくような研究が今後は必要になってくると考えています。
内藤 裕二
京都府立医科大学大学院医学研究科
教授/医学博士