泣くな今朝丸裕喜…報徳学園のセンバツ準V右腕に“恩師”関メディ・井戸伸年総監督がエール

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関メディベースボール学院中等部出身の今朝丸裕喜

第96回選抜高校野球大会決勝で健大高崎相手に85球の熱投を見せながら敗れ、惜しくも準優勝に終わった報徳学園・今朝丸裕喜投手(3年)を温かい眼差しで見守る恩師がいた。

兵庫県西宮市の野球専門校・関メディベースボール学院中等部の井戸伸年総監督(47)だ。決勝が行われた3月31日は中等部の試合後、神戸市内にある室内練習場に戻ってテレビ観戦。2年前に関メディから巣立っていった教え子の力投を見守った。

「負けてしまいましたが、本当に逞しくなりましたね。去年とストレートの質が全然違ったし、圧倒的な球威で凄みを感じました」

身長188センチの最速151キロ右腕は、昨春以上のスケールになって今春センバツで躍動。準々決勝では優勝候補の大阪桐蔭打線を5安打1失点に封じて完投勝利を挙げ、さらに評価を高めた。決勝も8回6安打3失点と胸を張れる内容だった。

「プロに行けると感じたのは彼くらい」

兵庫県神戸市生まれの今朝丸が関メディに入ったのは中学1年の時。井戸総監督は「入ってきた当時はそこまで背も高くなかったし、スピードも速いわけではありませんでした。コントロールが良くてゲーム作りがうまい器用な投手でしたね」と振り返る。

一方で、物事に動じることがなく、常に淡々とプレーする姿や練習に対する姿勢を見て、将来のプロ入りを直感したという。

「中学の時点でプロに行けると感じたのは彼くらいですね。素質も人間性も素晴らしいものがありました」

かつて近鉄、オリックスでプレーした井戸総監督の方針で、関メディでは日頃の練習から大観衆の前でプレーすることを意識させるように徹底。高校、大学、社会人、プロと先の長い野球人生を見据えた教育をすることで、大舞台に強い選手を育成している。メンタルコーチがSBT(スーパーブレイントレーニング)を指導するのもその一環だ。

練習後には必ずノートにその日の気付きや感じたことを書いて提出させている。関メディでプロ通算165勝の佐藤義則コーチや同139セーブの赤堀元之コーチ(現くふうハヤテ監督)、同56勝の伊藤敦規コーチらの指導を受けた今朝丸は、全ての教えを脳と体に染み込ませ、みるみる成長した。高校進学後も身長と球速は伸び、今やプロ注目のドラフト候補だ。

井戸総監督は「大観衆の中でプレーすることに喜びを感じ、環境を味方につけることが大切だと教えてきました。中学時代は常に全力投球していましたが、今は抜きどころも分かってゲームの作り方が一層うまくなりましたね」と感心した様子だった。

今秋ドラフトで関メディから初のプロへ

恩師と教え子は今も試合のたびにLINEで連絡を取り合う。「頑張れよ」という短いメッセージの中に深い愛情が詰まっている。

日増しに逞しくなったセンバツ準優勝投手。その眩しい背中は、関メディ中等部の後輩たちにとって憧れであり、目指すべき存在でもあるのだ。

「後輩に夢と希望を持たせる存在なので、さらなる活躍を期待しています。去年も夏は甲子園に出ていないので、最後の夏をいい形で終わって、次のステージに上がっていってほしいです」

今朝丸が同学院から初のプロ入り選手となる期待は、今大会でさらに膨らんだ。春の悔しさを胸に夏に甲子園に戻り、秋には運命のドラフトが待つ。大型右腕の野球人生はこれからが本番だ。



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