建設各社/正念場の24年度がスタート、上限規制契機に変革できるか

2024年度に入り、建設業に時間外労働の罰則付き上限規制が適用される。前倒しで達成できている企業がある一方、需要が旺盛な中で依然として高いハードルとの不安もくすぶる。DXなどを駆使した生産性向上や多様な人材の確保・育成、サプライチェーン(供給網)全体での働き方改革が一層求められることになる。 =1面参照
5年間の猶予期間があったものの、「一定の成果が実りつつあるが課題が残る」(ゼネコントップ)、「現在の手持ち工事量では難しい」(設備トップ)との懸念は根強い。大型再開発や半導体関連など民間投資は堅調で、国土強靱化やインフラ更新需要ニーズもあり、現場の繁忙度は高い。生産性向上につなげる新技術やデジタルツールの有効活用に加え、バックオフィスからの現場支援などあらゆる手段を講じて法令を順守していく方向だ。
人材の囲い込みに向け大幅な賃上げを続ける企業が出てきた。中途採用を増やしたり、シニア世代や外国人材などを含めて多様な人の活躍の場を広げたりする動きも強まるだろう。即戦力の獲得や業域拡大を狙ってのM&A(企業合併・買収)も増えそうだ。
「量にこだわらず利益重視で取り組む」「4週8閉所ができない案件は受注しない」。建設各社は選別受注への姿勢を鮮明にする。適正な価格と工期が確保できなければ、現場が疲弊してトラブルにつながりかねない。適正工期に理解を示す顧客が増えてきたとの見方もあり、受発注者の関係性に変化が生まれている。
こうした流れはゼネコンと協力会社との間も同様だ。技能労働者に適切な賃金が行き届かなければ、担い手が建設業界から離れてしまう。依然として現場に投入できる人数が施工能力に直結する状況があり、強靱な供給網を維持できるかは競争力に直結する。建設業と同様に時間外労働の規制が強化される物流業界にも適切に対応しなければ、資材が届かない事態に陥りかねない。「供給網から選ばれるゼネコンを目指す」(ゼネコントップ)姿勢がより重要になる。
厳しい状況だが「改革の絶好のチャンス」(ゼネコントップ)との声も上がる。人海戦術ばかりに頼るようでは人口減少下の日本で、豊かな国民生活を支え続けることはできない。「いったん休めるようになれば気持ちが戻ることはない」。上限規制をクリアできた建設会社トップは意識改革こそ重要と説く。担い手に選ばれる業界に変革できるのか--。本当の意味での正念場を迎えることになる。

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