能登半島地震3カ月/本復旧へフェーズ移行、円滑な施工確保策や技術課題検討が進展

能登半島地震の発生から1日で3カ月を迎え、官民の総力を結集して取り組んでいるインフラ復旧工事が新たなフェーズに移行する。国土交通省北陸地方整備局は本復旧工事の円滑な施工確保に向け、入札契約手続きの簡素化を柱とする発注方針を策定した。大部分の発注手続きを行う能登復興事務所や能登港湾空港復興推進室の人員体制も増強する。3月29日には災害復旧事業を含む同局全体の2024年度業務・工事発注見通しを公表した。担い手となる建設業界も本復旧をにらんだ態勢強化の動きが出ている。=4面に発注予定
北陸整備局が災害協定を結ぶ建設関係団体と連携し、発災直後から取り組んできた基幹道路や河川・砂防施設、港湾、上下水道などの緊急復旧工事は着実に進展している。
同15日に能越自動車道・のと里山海道の金沢市から能登半島北部の石川県輪島市に向かう片側全線が通行再開。同19日には新潟県上越市にある直江津港の一部岸壁が応急復旧し大型貨物船の入港を再開した。
緊急復旧工事と並行して本復旧の技術課題も道路や河川・砂防、港湾といった施設別に外部有識者らと議論。基幹道路は緊急復旧レベルで対応できる工事がほぼ完了しつつある中、骨子として当面の施工方針や留意点をまとめている。
被害規模が大きく原形復旧が難しい場合、できるだけ既存の道路用地を活用することを前提に新たなルート選定も検討する。特に被害が集中した国道249号沿岸部の地滑りリスクが高い箇所は海岸隆起の活用を考える。緊急復旧レベルの工事では対応できない同区間にある複数のトンネルについては、地山の安定性を確認してから現位置で復旧できるか判断する。
港湾の復旧設計方針も基幹道路に先立ち策定している。被害のメカニズムや大きさを踏まえ原形復旧が難しい場合、設計照査を行う。構造の連続性も考慮しつつ、必要に応じ液状化対策も講じる。おおむね2年以内の復旧完了を目指す。当面は港湾施設ごとに本復旧の設計に順次着手。今夏にも本復旧見通しを公表する。
河川や砂防施設の復旧方針は議論中。当面は2次災害を防ぐため、今年の出水期までに緊急復旧工事完了を目指す。
北陸整備局はこれから本復旧工事の発注が本格化するのに併せて、入札契約手続きの簡素化や技術者の効率的配置、地域建設業の積極活用などに考慮しながら円滑な施工確保を後押しする。同29日公表した24年度発注見通しによると、工事532件のうち83件が能登半島地震災害復旧関連。予定価格3億円以上の案件は本官契約、それ以外は分任官契約となる。
2月に石川県七尾市に設置した能登復興事務所は当初の16人から50人規模、能登港湾空港復興推進室は3人から12人に職員を増員し、発注手続きを進める。
一方、日本建設業連合会(日建連)は2月に「能登半島地震復旧・復興対策部会」を新設。本復旧段階に移る過程で工事の大幅な増加が見込まれる中、円滑な施工確保に向け課題や対策を集中して話し合う。全国建設業協会(全建)も引き続き災害対策協力本部を介し会員一丸で対応する。

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