【社説】能登半島地震3カ月 住民の声くんだ復興計画を

 石川県で能登半島地震が発生し、きょうで3カ月になる。被災者の生活再建は道半ばだ。4千人超が避難所に残り、ホテルや旅館への2次避難者も3千人を超す。断水の解消は、県の示した見通しより遅れ、珠洲市のほぼ全域や輪島市などでまだ続く。

 何より気がかりなのは倒壊家屋や、がれきの撤去が思うように進んでいないことだ。復興への入り口であり、長引けば被災者の気持ちがなえかねない。被害認定調査のノウハウを持つ自治体職員や民間の支援、一般ボランティアの受け入れを増やしたい。仮設住宅の整備や医療の維持にも、てこ入れが必要だ。

 県は先ごろ、2032年度までに取り組む復興計画の骨子を示した。災害に強い地域づくり、なりわいの再建、暮らしとコミュニティーの再建など5項目の施策である。

 被災自治体をはじめ、次世代と地域活性化に挑む県内の民間人、東日本大震災で復興事業に関わった有識者らとの議論を踏まえたものだ。理念に「創造的復興」を掲げたのは、うなずける。

 人口減少や高齢化が進んでいた能登は今回、柱の農林水産業や観光業が厳しさを増した現実がある。地方の多くが直面する地域課題の解決モデルを目指すという。

 5項目の施策では、なりわい再建の道筋を示せるかが鍵となる。海産物や輪島塗の店が並んだ「輪島朝市」は大規模火災で焼失し、国名勝の棚田「白米(しろよね)千枚田」では広範囲に亀裂が入った。暮らしや祭りを支える密なコミュニティーは、広域避難に加え、仕事や教育環境を考えた若い世代の流出で存続が危ぶまれる。

 観光客や移住者を引きつけてきた能登らしさは、地域経済の要でもある。再建に乗り出す民間有志の動きが既にあり、地元を勇気づける象徴となるだろう。

 復興は地域再生と表裏一体だというのが、東日本大震災をはじめとする災害の教訓だった。能登で留意したいのは、なりわいの担い手や被災者の高齢化が際立つ点だ。さらに海底隆起した漁港や沿岸の崩れた道路など、なりわいの前提となるインフラの損傷も深刻である。政府としても復旧・復興支援本部を設けており、長い目で自治体への支援が欠かせない。

 東日本大震災の復興で見えた負の側面も教訓とすべきだろう。巨額の高台移転を進めたものの、工事が長引く間に人口が大幅に減り、空き地が目立つ場所は少なくない。

 一方で、行政の防潮堤計画に反対し、漁業を通じて海と共生するまちづくりを住民主導で進めた地域や、若者による新ビジネスなどで観光を再興した地域もある。住民による議論を丁寧に深め、コミュニティーの力を生かした過程が功を奏した。

 石川県は被災地を巡回する対話集会を経て、5月に復興計画をまとめる。理念の実現には、住民の声を十分にくむことが第一歩だろう。

 人口減少が加速する地方にとって、能登の復興は人ごとではない。関心を持ち、物心両面でサポートしたい。

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