アングル:米株上昇勢い続くか、鍵はFRBと企業業績 波乱の懸念も

David Randall

[ニューヨーク 29日 ロイター] - 今年、好調なスタートを切った米国株式市場だが、第2・四半期は波乱含みの展開もあり得ると投資家は警戒している。焦点は、米連邦準備理事会(FRB)が6月までに利下げするかだが、企業業績への関心も高い。

4月最初の週は、米供給管理協会(ISM)の製造業・非製造業景気指数、注目の3月雇用統計が発表される。ロイター調査によると、3月の非農業部門雇用者数は19万8000人増加と予想されている。企業決算の発表は4月の第2週から本格化する。

S&P総合500種指数は第1・四半期に10%超上昇した。第1・四半期としては、2019年(約13.1%上昇)以来の大幅高だ。エヌビディアやメタなど、いわゆる「マグニフィセント・セブン」株が上昇の立役者だが、エネルギーや工業など景気敏感株もこの6週間、上昇した。

上昇が6月末まで続くかどうかは、FRB次第となりそうだ。FRBは、利下げを正当化するほどインフレが低下したと納得した様子はない。

今年1月、市場は年内に6─7回の利下げを織り込んでいたが、米経済の軟着陸観測が高まり、現在は3回に減少。CMEのフェドウォッチによると、先物市場は現在、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)が25ベーシスポイント(bp)の利下げを決定する確率を61%織り込んでいる。 ネド・デービス・リサーチのチーフ・グローバル・マクロ・ストラテジスト、ジョー・カリッシュ氏は、市場の予想とFRBの予想がようやく一致してきたと指摘した。ただ、見方が収れんした分、ある方向に動くのにそれほど時間はかからないため、波乱につながりやすいと予想する。「インフレ面でさらなる進展が見られなければ、ボラティリティーはさらに高まる」と述べた。 ハーバー・キャピタルのマルチアセット戦略チームのポートフォリオマネジャー、ジェイソン・アロンゾ氏は、投資家はより魅力的なバリュエーションを模索しており、米経済の成長が持続すれば、株価上昇の裾野が広がり続ける可能性が高いとみている。

第1・四半期は、上昇が景気循環セクターや小型株にも波及し、ラッセル2000小型株指数は4.8%上昇、S&P500種工業株は11%近く上昇した。 アロンゾ氏は「市場が今唯一気にしているのは、経済が再び加速してもFRBのスタンスが変わらないかどうかだ。もし、風向き変わりFRBが再び利上げの話を持ち出さざるを得なくなれば、投資家がショックを受け、全てのアセットに深刻な問題を引き起こすだろう」と述べた。

CFRAリサーチのチーフ投資ストラテジスト、サム・ストーバル氏は、FRBの利下げが現実味を帯びるに伴い、相場の上昇が鈍り始めても投資家は驚かないはずだと指摘した。

同氏によると、1989年以降、S&P総合500種指数は、引き締めサイクル最後の利上げから最初の利下げまでに平均15.5%上昇したが、最初の利下げ後の6カ月間の上昇率は平均5.4%にとどまった。 とは言っても、歴史的に第1・四半期の強さは次の四半期に引き継がれてきた、とトゥルイスト・アドバイザリー・サービシズの共同最高投資責任者、キース・ラーナー氏は指摘する。過去に第1・四半期のS&P500指数のトータルリターンが10%以上だった11回中、9回は第2・四半期も平均6.2%上昇しており、今回もそのパターンになると予想する。最大のリスクは、FRBが年末まで金利を維持することを検討する兆しが出ることで、そうなればリスク資産の「劇的な」調整が起こると述べた。 市場の勢いが鈍るかどうかは、企業収益も大きく左右するとジョン・ハンコック・インベストメント・マネジメントの共同チーフ投資ストラテジスト、エミリー・ローランド氏は述べた。FRBの金融政策の見通しが修正されたものの、企業収益は驚くほど堅調で、S&P500指数の最高値更新に貢献してきた。 LSEGのI/B/E/Sによると、S&P500指数構成企業の2023年第4・四半期の利益は10.1%増加で、4.7%増加という予想の2倍以上となった。第1・四半期の予想は5.1%増加。 ローランド氏は「企業収益が引き続き予想以上に強ければ、FRBは今年3回の利下げを正当化しづらくなるだろう。インフレが安定すれば、今の経済再加速はより持続可能なものになる可能性がある」と述べた。

© ロイター