【霞む最終処分】(30)第5部 福島県外の除染土壌 千葉・柏㊦ 造成工事で所在不明 長期保管 課題浮き彫り

柏市で2013年ごろに行われた除染作業。土壌は国の処分基準が決まらず、埋設保管が続いている

 東京電力福島第1原発事故に伴う除染が行われた千葉県柏市で2018(平成30)年度、民有地に埋設保管されていた除染土壌が掘り返され、行方が分からなくなる問題が起きた。会計検査院が2020(令和2)年2月に行った現地調査で明るみに出た。市はそれまで、事態を把握していなかったという。

 議場で市に事実関係をただした市議の末永康文(無所属)は「国が早く処分基準を決めないために生じた事態だ。除染廃棄物が最終処分されないままでは、今後、同じことがまた起きても不思議ではない」と語気を強める。

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 会計検査院や市などによると、問題となった民有地には除染土壌50立方メートルが埋設されていた。所有者が行った土地の造成工事の過程で、土壌が敷地外へと運び出されたとみられる。市は土壌の搬出先を探そうとしたが、行方はつかめなかった。運び出された土壌の放射線量は人体に影響のない数値と推計し、調査を終えている。

 原発事故に伴い、福島県外で発生した除染土壌の総量は33万198立方メートルに上る。このうち、94.4%に当たる31万1755立方メートルは埋設などの方法で除染現場にとどめ置かれたままだ。残りも仮置き場での保管が続いている。

 柏市は環境省に対し、各自治体の実情に応じた処分基準を早期に示すよう要望してきた。同省はこうした自治体からの声を受け、安全な埋め立て処分方法の検討を進めている。宮城県丸森町などでの埋め立て処分の実証事業の結果を踏まえ、2024年度中に処分基準を策定する方針だ。

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 柏市では除染土壌が各地に埋設されている他、清掃工場「市北部クリーンセンター」の敷地内には原発事故発生後、市内で収集された草木などの廃棄物を燃やした結果、放射性物質濃度が高まった焼却灰が保管されている。

 センターから直線距離で200メートルほどの場所に暮らす、パート従業員の増田則政は「このまま半永久的に残り続けるのではないか」と処分の行方が定まっていない現状に不安を抱く。地震や台風など大規模災害により、保管中の焼却灰が外部に流出する可能性もゼロではないのではとの懸念がある。

 「除染廃棄物を抱えている点で、福島県民と同じ被災者の立場だと感じている。国に対し、廃棄物をどのように最終処分するかを一刻も早く示すよう求めたい」と訴えた。(敬称略)

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