「死なんでよかったね」車窓の自分に声かけた…はるな愛さん、悩み苦しんだ半生と“居場所”の大切さ語る

居場所づくりの重要性について話し合うはるな愛さん(中央)ら=3月27日、埼玉県鴻巣市

 埼玉県鴻巣市の旧笠原小学校で3月27日、「めっちゃ大事な子どもの居場所」と題し、地域での活動を話し合うフォーラムが開かれた。同市子どもの居場所ネットワーク会議主催。タレントのはるな愛さんが講演し、「コロナ禍で全国の子ども食堂とオンラインでつながった。変化の早い時代なので、やってみようと乗ってみることが大事」と話した。

 「男らしくって、何ですか」。はるなさんは冒頭で問いかけた。大阪府出身。一家の長男として生まれ「女の子になりたい」という気持ちを誰にも言えず、黒いランドセルや詰め襟の制服、女子と男子の区別が「嫌だった」。いじめられてつらい日々に「何のために生きているんだろう」と何度も歩道橋に立った。「次のトラックが来たら飛び込もうと。人生がどうなっていくのか分からず、生きるか死ぬか、いつも悩んでいた」という。

 転機は知人に連れられ訪れたいわゆる「ニューハーフ」のショーパブだった。「自分の求める世界ではない」と思っていたが、きれいなドレス姿にお客さんが称賛を贈る光景に「なんて幸せな場所だろう」と働き出した。たくましく生きる「お姉さん」から多くのことを学んだ。いじめもパタリとやみ、「居場所を見つけたからだ」と思った。

 憧れの芸能界に飛び込んでからも多くの困難に見舞われたが、悩みを強みに変えて乗り越え、「必要とされる喜び」を見いだした。

 大ブレークし仕事が増え、移動中の車窓に映る美しい衣装を着た自分の姿に「死なんでよかったね。やってきてよかったね」と、声をかけた。

 東京パラリンピックの開会式で、障害がある人らと共にダンサーとして出演。「コンプレックスを受け入れてくれて、話せる空気があり心地よかった。カバーし合える優しさが社会にあふれてほしい」と振り返った。子ども食堂などの活動を通じ、「言い出せないけど貧困に苦しんでいる人は実は身近に多くいる」と痛感してきた。「物価も上がり大変な時代だけど、人のことを考えるポケットだけは開けていたい。みんながつながることが大切」と強調した。

 フォーラムでは、市内で子どもの居場所づくりに関連した活動をする5団体の代表者が参加したパネルディスカッションも行われた。参加者は「不登校の子どもが『本当は学校で友達と勉強したい』とつぶやき、フリースクールでの支援を始めた」「寺で実施しているが、檀家さんも理解し協力してくれる」「地域の人が参加して、子どもだけではなくみんなの居場所になっている」と活動の中での気付きを共有した。

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