給食費、保育料の無償化 長崎県内で動き広がる 既に自治体間競争に…支援に格差も

県内21市町の給食費と保育料無償化の取り組み状況

 長崎県内の自治体で新年度から小中学生の給食費や0~2歳児の保育料を無償化する動きが広がっている。ただ、支援内容に地域差が生じることに、識者は「自治体間競争になってしまっている。国が音頭を取るべきだ」と指摘する。
 公立小中学校の給食費について、4月から完全無償化に乗り出すのは、諫早、雲仙、東彼波佐見の2市1町。東彼杵町は2021年9月から国の交付金を活用し断続的に実施していたが、4月からは自主財源で行う。川棚町は町立中と第3子に限り無償化。東彼3町の積極性が目立つ。
 自主財源による無償化をしていないのは12市町。長崎、島原、大村各市教委などは国に制度化を強く要望している。
 一方、保育料は、国が19年10月から3~5歳児を無償化。0~2歳児についても同時在園(子ども2人以上が保育園などに在席)の場合、2子目を半額、3子目を無償としている。ただし送迎費や行事にかかる費用はこれに含まれていない。
 東彼杵町は4月から、完全無償化に踏み切る。同時在園かどうかも問わない。北松小値賀町が16年度、平戸市が22年度からと先行しており、県内3例目。これで東彼杵町は県内唯一、給食費と保育料両方の完全無償化を実現する形となった。
 このほか一部無償化の市町もあるが、「第2子以降を完全無償化」「同時在園の場合のみ第2子以降を無償化」「国基準だが同時在園は問わない」など条件が異なる。
 長崎大教育学部の小西祐馬准教授(児童福祉論)は、この状況を「とにかく分かりづらい。国が主導権を取らず、ある意味で自治体間競争になった弊害だ」と問題視する。
 保育料も給食費も無償化していない2町は、それぞれ事情を抱えつつも準備を進めている。西彼長与町は「町長選を4月に控え、現在は骨格予算。保育料については今後検討する」。新上五島町は、24年度中に同時在園を問わない第2子以降の保育料半額を目指す。
 小西准教授は「家賃が高いのに給料が低く、住みにくい長崎の市民に『残って暮らそう』と思わせるには、県外の自治体と同じ動きでは間に合わないのではないか。国が音頭を取るのが一番大事だが、長崎には一刻も早く完全無償化が必要」と警鐘を鳴らす。

© 株式会社長崎新聞社