新年度から小学校の全ての教科書に2次元コード(QRコード)が掲載され、音声や動画のデジタル教材を授業で使えるようになる。子どもたちの学びが変わる中、教員の学びにも変化が起きている。鹿児島県総合教育センターは、教員向けポータルサイトを今年開設し、最新の研修教材を提供。オンラインでの講座も開き、離島や中山間地の教員が学ぶ機会を確保する。
1人1台端末など学校の情報通信技術(ICT)環境が整備され、県や鹿児島市は、教育DX(デジタルトランスフォーメーション)を推し進める。しかし、教員の理解が進んでいるとは言いがたいのが現状だ。
教育センターは昨年6~9月に実態調査を実施。講座の受講者ら392人にDXについて尋ねたところ、「全く知らない」が56%を占め、「名前は聞いたことがある」が40%。「よく知っている」は4%だった。
「DXに対して漠然としたイメージしかない先生が多いようだ。不安を感じている人もいるかもしれない」。教育センターの野本正樹情報教育研修課長は、教員へ情報を発信していく必要性を痛感したという。
そこで、校内研修や個人研修の教材、具体的な取り組み例などを網羅したポータルサイト「かごスタDX」を作った。取り組み例は指導法と校務、データの利活用について、それぞれ3段階に分けて紹介している。
指導法では、紙の問題プリントをやめて端末に配信したり、観察や実験を動画で確認したりするケースをDXへの第1段階として紹介。第2段階では、児童生徒がネット上の同時編集機能を使い、プレゼンテーション資料を共同で制作するといった例を挙げる。
第3段階は、メタバース(仮想空間)を活用するなどして、離島や不登校の児童生徒でも専門的な学習や交流ができる「多様な学び」を掲げている。
24年度には、かごスタを使ったオンライン講座も開き、離島や遠隔地の教員が参加するハードルを下げる。かごスタを披露した1月の研究発表会では、対面参加207人に対し219人がオンラインで聴講した。
徳之島町教委の福宏人教育長は「離島の小規模校は教員も少ないので休みが取りづらく、研修に参加したくてもできなかった」とオンライン講座を歓迎する。
町は小規模校を双方向でつなぐ合同授業を行うなど、ICT活用に積極的に取り組む。福教育長は「学校教育は転換期。子どもだけでなく、先生も授業改善を学んで実践してほしい」と訴えた。