別れ惜しむ紙テープ 恩師や仲間に向けた校歌やエール 岸壁に響き渡る 新上五島・有川港

デッキ上の転出者と見送る住民は、しばし紙テープでつながり、別れを惜しんでいた=新上五島町有川港

 新上五島町有川港はこの季節、転勤や進学のため船で島を離れる人を見送ろうと、たくさんの住民が集まる。別れを惜しむ両者をつないだ紙テープがちぎれ、海風にたなびく-。島ならではの切ないシーンだ。
 3月29日、恩師や仲間に向けた校歌やエールが岸壁に響き渡る。色とりどりの紙テープの先は束ねられ、デッキ上の転出者が握り締めている。やがて「蛍の光」が流れ、約500人に見守られながらフェリーがゆっくりと離岸。多くが声をかけ合い、涙ぐんでいた。県立上五島高の山口裕平教諭(30)は「こうやって見送るのが、わが校の伝統。心に残りますよね」と話した。
 「いままで紙テープで盛大に送ってきた。島の大切な風物詩」。30日、県職員の平井太郎さん(50)はこう言いつつ、自身も本土に戻ることになり「見送られる側になるとつらい」と、あえて高速船を選んだ。安全上、紙テープは使えない。それでも桟橋に集まった人たちは船体が見えなくなるまで手を振り続けた。

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