能登半島地震被災のセラピスト加藤さん 避難先鹿沼で慈善施術 収益、家族残る珠洲へ

知人が作成した復興支援Tシャツを着て施術する加藤さん。右は娘の福田里江子さん=31日午後3時、鹿沼市坂田山2丁目

 能登半島地震の影響で、石川県珠洲市から鹿沼市内へ2次避難しているセラピスト加藤美紀(かとうみき)さん(66)が31日、市内で開かれた人形劇公演の会場でチャリティーセラピーを行った。恵まれた環境への感謝と、珠洲市で暮らす家族らへの罪悪感。葛藤を抱えながらも市内での活動を始めた。

 加藤さんは珠洲市上戸町北方の自宅でセラピーサロンを経営していた。2世帯で暮らす次男家族と自宅でだんらん中に被災。家具や家電は大部分が壊れたが、家屋の損傷は小さく在宅避難を続けた。

 膵臓(すいぞう)がんで闘病中の夫秀夫(ひでお)さん(75)の療養のため1月下旬、次男家族を残して娘婿の実家がある鹿沼市内へ引っ越してきた。

 避難後も報道で、苦悩する被災者を目にしてきた。「私は水も自由に飲めるし、食べ物も十分にある。珠洲の人たちに申し訳ない」

 感傷に浸ることもあったが「せめて誰かの役に立ちたい」。知人の仲介で市内の障害者福祉施設でエクササイズ指導を行い、3月には上野町の避難先の一室でセラピーサロン「アンサールカトウ」を始めた。

 31日はかぬまケーブルテレビホールでチャリティーセラピーを行い、15分500円で23人に施術した。収益のすべてを珠洲市社会福祉協議会に寄付する。

 当分は鹿沼市内で活動を続ける予定。加藤さんは「途切れることなくお客さんが来てくれた。私がここで生きる意味があるんだって思えた。少しでも珠洲の力になれたら」と語った。

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