遠藤周作の弟子・加藤さん 「沈黙」の新解釈紹介 生誕100年記念行事で講演 長崎

遠藤の代表作「沈黙」について講演する加藤さん=長崎市遠藤周作文学館

 江戸時代の長崎を舞台にした1966年発表の代表作「沈黙」で知られる作家、遠藤周作(23~96年)の生誕100年を記念した講演とコンサート、朗読の会が16日、長崎市東出津町の市遠藤周作文学館で開かれた。遠藤の弟子で作家の加藤宗哉さん(78)=東京=は講演で、半世紀以上読み継がれている「沈黙」について「これからも検討、解釈され本当に理解されていく」と述べ、不朽の名作としての価値を強調した。
 生前の遠藤と交流のあった市民らでつくる「周作クラブ長崎」が、昨年の生誕100年にちなんで同文学館と共催。ファンら約70人が参加した。
 講演で加藤さんは、「沈黙」に登場する「踏むがいい」という神の言葉に関する研究者の分析を紹介。発表当初からの英訳本では「踏みつけろ」という父性的な英訳なのに対し、2016年の映画「沈黙-サイレンス-」(マーティン・スコセッシ監督)では、「いいから踏みなさい」と母性的に変換されたとの見方。加藤さんは「遠藤の真意を監督がすくい上げた」と述べ、新たな解釈の一例として挙げた。
 これに先立ち、周作クラブ長崎の会員で大学生の頃、遠藤が編集長を務めた文芸誌「三田文学」の編集部員だった中村重敏さん(77)=長崎市=が講演。当時の遠藤について「優しい人だが編集室ではものすごく怖かった」と思い出を語った。声楽とピアノによるコンサート、「沈黙」の一節の朗読もあった。

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