「寂しい」「残念」 閉館惜しむ市民、続々来館 棟方志功記念館(青森市)

棟方志功の胸像と一緒に記念撮影する親子連れ

 青森市の棟方志功記念館が48年余りの歴史に幕を閉じた31日、記念館には多くの市民がひっきりなしに訪れ、「寂しい」「残念」と思い出を振り返りながら館内のあちこちで記念撮影する姿が見られた。棟方の孫で棟方志功研究家の石井頼子さん(富山県南砺市在住)、記念館建設を発案した竹内俊吉元知事の孫の村田泉さん(北海道函館市在住)らゆかりの人物も来館。青森市の県立美術館に作品が移管されることを念頭に、「次のステージが楽しみ」「作品の価値を発信し続けて」などと期待した。

 「いつでも来られると思っていた記念館が閉まってしまうのは悲しい。子どもたちは細かい部分まで理解できないかもしれないが、記念館の雰囲気や色などを記憶に残してもらえたら」

 小学生の長女、長男と3人で来館した青森市の主婦三上香奈子さんにとって、記念館は幼い頃から何度も通った思い出の場所。入り口で棟方の胸像と子どもたちの姿をスマートフォンのカメラに収めた後、一作品ずつ丁寧に鑑賞していた。

 一方、敷地内の日本庭園をスマートフォンで撮影していた同市の男性(66)は「現在の記念館という形で何とか残してほしかった」と複雑な表情。「建物の老朽化であれば、建て替えという選択肢もあったのでは」と疑問を呈した。

 「一歩も立ち止まることのない人生を歩んだ棟方のことを考えれば、次に続くステージを考えるほうが楽しみ」と笑顔を見せたのは、棟方の孫の石井さん。作品の移管先の県立美術館が2023年、棟方の疎開先だった南砺市の市立福光美術館と連携の覚書を結んだことに触れ、「棟方を介したつながりがどんどん広がっていけば」と語った。

 竹内元知事の孫の村田さんも、竹内の俳句をモチーフに棟方が制作した「竹内俊吉句板頌(はんしょう)」を眺め、「棟方作品は世界的価値のある唯一無二のもの」と力説。「閉館は寂しいが、棟方を郷土の誇りとする思いは今後もつながっていってほしい」と話した。

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