【J2「一進一退」】清水、山形の背番号10番のテクニカルゴールに沈む 乾貴士ら主力3人不在は影響大でも17歳FWのドリブルには可能性(1)

清水の攻撃の要・乾貴士ら主力3人の不在の穴は大きく……  撮影/中地拓也

■清水は攻撃のトライアングル不在でビハインドを背負う

「超攻撃的」が、緊急事態に陥った。

J2リーグ第7節が3月30日に開催され、2位の清水エスパルスは13位のモンテディオ山形と対戦した。秋葉忠宏監督が指揮する清水はここまで5勝1敗で、昨年8月以来の4連勝を目ざす。

この日の清水は、3人の主力を欠いた。トップ下の乾貴士、左MFのカルリーニョス・ジュニオ、1トップの北川航也がメンバー外だった。攻撃のトライアングルを欠くなかで、秋葉監督はトップ下にMF松崎快、左MFに白崎凌兵を指名し、1トップには高卒ルーキーのFW郡司璃来を抜てきした。市立船橋高校から加入の郡司は、プロ初先発初出場である。

前半は山形に押し込まれた。山形は4-2-1-3のシステムでトップ下を定位置とする國分伸太郎が左サイドへ流れ、それに伴って左ウイングから中央へ入ってくる背番号10・MF氣田亮真を、どうやってつかまえるのかがはっきりしないのだ。

清水は、30分過ぎからは2列目の立ち位置を変え、右から松崎、白崎、ルーカス・ブラガとする。郡司を含めた4人で前線から相手のビルドアップをけん制していくのだが、ボールを奪う位置は自陣になりがちで、カウンターを仕掛けることもままならない。

34分には左サイドで國分をつかまえられず、中央へパスをつながれて氣田にコントロールショットを決められてしまう。密集からゴール右を射抜いた氣田のシュートは素晴らしかったが、ボールを握られて揺さぶられた末の失点である。清水からすれば、完全に守備を崩された場面だった。

■交代カードを切るが攻撃は散発で…

後半開始とともに、秋葉監督が交代カードを切る。郡司を下げてFW千葉寛汰が登場する。

後半は立ち上がりにゴールへ迫った。ルーカス・ブラガのスルーパスに反応してDFラインの背後を突いた松崎が、決定的なシュートを放つ。さらに50分、千葉が左サイドを破り、松崎と右SB吉田豊が連続してシュートするが、得点をあげることはできない。

このまま攻勢を強めたい清水だが、山形に押し戻されてしまう。前線からのプレスがハマらないのは前半から変わることがなく、乾、カルリーニョス・ジュニオ、北川がいないために、ボールの落ち着きどころがないのだ。

秋葉監督は66分にルーカス・ブラガを下げ、17歳のMF西原源樹を投入する。75分には右SB北爪健吾とMF西澤健太、82分には成岡輝瑠を送り込み、中盤からの前線の立ち位置も変えながら突破口を見出そうとする。だが、ボールを保持しながらゲームをコントロールしていく山形から、主導権を奪い取ることはできない。

決定機を作り出せないまま迎えた88分、左からのクロスを左CB蓮川壮大がヘディングでクリアするが、ニアサイドでフリックしたような軌道になる。GK権田が飛び出してガラ空きになったゴールへ、FW高橋潤哉に押し込まれてしまった。J2リーグ戦では昨年9月以来となる無得点に終わり、清水はシーズン2敗目を喫した。

完敗と言っていい試合で、可能性を感じさせたのは西原だ。84分、左サイドのタッチライン際からドリブルで仕掛け、対峙する右SBを一気に振り切った。ペナルティエリア内まで持ち込んだそのドリブルは、今後の活躍を強く期待させるものだった。すでに相応のインパクトを記しているが、「西原源樹(にしはらもとき)」という名前は、やはり覚えておいたほうがいい。

秋葉監督は試合後のフラッシュインタビューで「(得点)ゼロは我々らしくない」と切り出し、「昇格するためには連敗できない。これを引きずることなく、必ず全員の力で勝点3を取りたい」と話した。

次節(ホーム)の対戦相手の徳島ヴォルティスは、ここまで1勝1分5敗の最下位で、吉田達磨監督が解任された。監督が代われば、相手の出かたが読みにくくなる。メンタル的にも強い危機感を持って乗り込んでくるのは間違いない。現時点での順位とは関係なく、簡単な試合にはならない。乾らが出場できるかどうかも含めて、中3日で迎える次節は清水にとって重要な一戦となる。

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