尼僧の性暴力被害告発巡り発信、天台宗僧侶・落語家露の団姫さんに聞く なぜ投稿を?

「性被害者の声には真摯に向き合わなければならない」と語る露の団姫さん(兵庫県尼崎市・道心寺)

 「性被害はどのような職種、年齢、人間関係でも『ありえない』ことではありません」―。天台宗の僧侶で落語家の露の団姫(つゆのまるこ)さん=兵庫県尼崎市=が、性被害者への連帯を示すメッセージをX(旧ツイッター)で発信している。50代尼僧の叡敦(えいちょう)さん=法名=が1月、天台宗僧侶による性暴力被害を告発したことを受け、投稿したという。この問題についてほとんどの僧侶が静観する中、どのような思いで発信したのか。露の団姫さんに聞いた。

 -なぜ投稿しようと思ったか。

 「叡敦さんが顔を出して会見した理由を信者さんへの誠意だと語っていて、その姿勢に胸を打たれた。私が僧侶として11年間受けている悩み相談では、性被害の相談も少なくない。叡敦さんの件は事実関係がまだ分からないとはいえ、同じ宗派内で起きたこと。沈黙していたら、これまで天台宗や僧侶という存在を信頼して被害を打ち明けてくれた人に不誠実だと考えた」

 -どのような性被害の相談があるのか。

 「私の元に来る宗教関連のものでは、大きく三つに分けられる。一つ目は、宗教者への相談を通して一方が相手に好意を抱いた結果、ストーカーとなったり相談中に抱きつかれたというもの。内面の問題を1対1の関係で話すため、親密な気持ちを抱きやすいのではないか」

 「二つ目は、性被害者が別の寺で被害を相談したところ住職にバカにされた、というケース。ある40代の女性相談者は僧侶から『いくつだと思っているのか、恥ずかしい』と笑われたという。『忘れなさい』と一蹴された人もいるなど、女性の宗教者から2次的被害を受けたケースもある。女性だからといって性被害に理解があるとは限らない」

 「三つ目は、宗教者にストーカーと結婚させられそうになった、という相談。あるキリスト教会では、結婚を希望する男性に対し、聖職者が信者の女性を勝手に引き合わせた。女性が交際を断ると男性はストーカー行為に及ぶが、聖職者は『神の導きだ』と女性を説得しようとし、女性は教会に通えなくなってしまった」

 「ある寺院職員の女性も、住職から紹介された男性につきまとわれた上、住職から『好いてもらっているんだから結婚しろ』と言われ、やむを得ず退職したと言っていた」

 -性被害の相談件数は。

 「年間5件ほどだったが、ジャニーズの性加害が社会問題化してから増えた。2024年に入ってから、すでに昨年の件数を上回っている」

 -宗教界の性被害をなくすためにすべきことは。

 「宗教界では、性やジェンダーに関する人権研修が少ない。ストーカーと結婚させようとするのも宗教者はよかれと思ってやっているのかもしれないが、女性の意思は全く尊重されておらず、人権感覚がないと言わざるを得ない。宗教界が今も男性社会であることも踏まえ、各宗教団体には性を正しく学ぶ機会を設けてほしいと思う」

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