アルプスの“女王”へ敬意を込めて 菊池哲男写真展「四季白馬」

By CAPA編集部

菊池哲男さんの写真展「四季白馬」が、2024年4月5日より開催される。

ハクサンイチゲのお花畑と白馬連峰

菊池哲男さんが初めて白馬岳に登ったのは、18歳のころ。テント泊で大雪渓を登り、山頂から白馬大池を越えて蓮華温泉に下った。20歳から本格的に山岳写真を撮り始め、当初は槍・穂高など、北アルプスの険しい山々を登ることが好きだったという菊池さん。しかし、雪渓や花畑などの多彩な表情を見せ、「女王」と称される白馬岳に魅了され、いつしか頻繁に訪れるように。結局、山岳写真家として国内外さまざまな山行を重ねながらも、35年もこの山に通うことになった。

菊池さんは撮影のたびに都心から電車や自家用車で山に通う生活を続けてきた。平均して1年の3分の1ほどを山で過ごすが、1回の撮影行は1週間にも満たないという。いっそ山の近くに住んだほうが楽なのでは? 素朴な疑問をぶつけると、こんな答えが返ってきた。

「僕の場合、山に対して常に “ビジター” でいることが大事なんです。道中でふだんの暮らしをリセットし、気持ちを作って山に臨む。そうしないと “女王様” にも失礼ですから……」

夕陽の白馬大池

白馬岳をテーマにした大規模な作品展は今回で3度目で、すべてデジタルカメラで撮影した写真となる。登って撮る山の表情はもちろんだが、今回は山麓に目を向けた作品も多く取り入れた。

「山に籠もるのでなく、麓に暮らす農家や山小屋の人たちとのコミュニケーションも大切にしています。人と山との関わりも、僕の大切なテーマです」

自然と人への敬意を常に忘れないこと。言葉にすれば当然のようでも、実践し続けることは容易ではないはずだ。山岳写真家として第一線に立ち続ける秘訣は、そこにあるに違いない。

菊池哲男写真展「四季白馬」

会期 2024年4月5日 (金) 〜11日 (木)
会場 富士フォトギャラリー銀座 スペース1・2・3
住所 東京都中央区銀座1-2-4 サクセス銀座ファーストビル4F
時間 10:30〜19:00 (土・日・祝日は11:00〜17:00、最終日は14:00まで)
休館日 会期中無休
入場料 無料
問い合わせ 富士フォトギャラリー銀座 (TEL 03-3538-9822)

ギャラリートーク

日時 会期中の毎日15:00〜
会場 富士フォトギャラリー銀座
出演 菊池哲男

菊池哲男 (Tetsuo Kikuchi)

1961年生まれ。立教大学理学部物理学科卒。山岳・写真雑誌での執筆や写真教室・撮影ツアーの講師、アウトドアブランドのアドバイザーとして活躍。長野県白馬村に菊池哲男山岳フォトアートギャラリーがある。東京都写真美術館収蔵作家。日本写真家協会会員、日本写真協会会員。
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〈文〉高橋佐智子

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