タヒチ開催のパリ五輪サーフィン競技「新しい審判塔がついに完成」と米専門誌。「サンゴの損傷は最小限に留まった」「波はかつてないほど完璧だ!」と地元写真家の声

パリ五輪のサーフィン競技は、パリから約1万5700キロ離れた南太平洋に位置する、フランス領ポリネシア・タヒチ島南部のチョープーで行なわれる。競技の開催を巡り、物議を醸していた審判員などが使用する審判塔が完成したことを米サーフィン専門サイト『The Inertia』などが報じた。

米サーフィン専門サイト『The Inertia』は3月27日、「(タヒチ)チョープー、新しいオリンピック審判塔が完成!」と題して、物議を醸していた審判塔の完成を伝えた。

冒頭で、同メディアは写真家ティム・マッケンナ氏が自身のインスタグラムに共有した、パリ五輪でサーフィンの競技会場となる「タヒチ・チョープー」のドローン映像を紹介。国際問題となっていた新しい審判塔が初めて公開されたことを伝えた。

写真家のティム氏は同投稿で「新しいタワーが立った。波はかつてないほど完璧だ」と綴りはじめ、現地の様子について「ラグーン(水深の浅いエリア)に水路が設けられ、工事用ボートが容易にアクセスできるようになったため、サンゴの損傷は最小限に留まった」と伝えた。

また同氏は「このラグーンに生息する特定の魚にシガテラが激増しているかどうかを確認するには、まだ時間がかかりそうだ」とサンゴ礁の掘削等によって繁殖が懸念されていた食中毒などを引き起こす、天然毒“シガテラ”についても言及。一方で「アルミ製の建設工事はかなり巧妙で、予想よりも早く完成したようだ」と伝え、続けて「これは今後20年間、サーフイベントのために使用できる最新鋭の審判塔だ」と綴った。

また『The Inertia』は、タヒチ・チョープーでのパリ五輪開催が決定してから、審判塔建設にあたって多くの反対運動があったことについて再度言及したうえで、ハワイを拠点にチョープーのサンゴ礁の環境調査をしている科学者チームや研究機関が、建設続行に反対する声明を発表したことを伝えた。

同調査チームは「審判塔建設のために行なわれる“水底の土砂等を掘りあげる工事”は、リーフの2,500平方メートルに影響を与える可能性があり、周辺のサンゴ礁や生態系にどのような影響を与えるかは未知数だ」と評価し、また「もしこのような事態が発生すれば、生きたサンゴ礁の生息地にダメージを与えることで、少なくとも130万米ドル(約1億9714万円)の直接的な経済的影響を引き起こす可能性がある」と警告した。
その後、審判塔建設を支持しないと宣言していた国際サーフィン連盟(ISA)が「陸上に審判塔を建設し、海底に小型カメラを設置するというものから、海底にカメラは一切設置せず(陸上から)100倍ズームレンズを使用するという案もあった」と2つの代替案を提示していたことを伝えた。

前出の反対の声や関連団体からの声明を受け、オリンピック組織委員会は「(代替案が提示された)翌日、建設を進めると発表したが、(一連の騒ぎや声明を受け)建設を一時中断し、建設計画の変更とスケジュールの修正などを行なった」と伝えている。

最後に完成した新しい審判塔について「WSL(ワールドサーフリーグ/世界最高峰プロツアー)のイベントに使用されていた以前の木製タワーと同じようにあくまで仮設のものだ。またすぐに撤去され、現在のアルミ製の審判塔を支えるために設置された新しい杭の上に再び(審判塔が)組み立てられる予定だ。これがチョープーの象徴的なリーフ(サーフポイントを形成している海底の岩、珊瑚など)にどのような影響を与えるかは、時間が経ってみなければわからない」と綴り、締め括った。

なお、サーフィンのパリ五輪は7月27日から30日の4日間、タヒチのチョープーで開催予定。“波乗りジャパン”(サーフィン日本代表)からは五十嵐カノア、コナー・オレアリー、稲葉玲王、松田詩野の4選手が出場する。世界最恐の波“チョープー”に挑む、日本人選手のメダル獲得に期待したい。

構成●THE DIGEST編集部

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